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ワイヤレス給電インホイールモーターは、大容量バッテリーよりも「トータルコストが安い」電気自動車(2/2 ページ)

東京大学とブリヂストン、日本精工(NSK)、ローム、東洋電機製造は2019年10月10日、千葉県柏市で説明会を開き、走行中のワイヤレス給電が可能なインホイールモーターの第3世代品を開発したと発表した。

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産学連携で実現した第3世代

 発表した第3世代は、全てインホイールモーター向けに専用設計されている。モーターはホイール内のスペースを最大限使う設計としている。アウターローターは回転半径を大きくして高トルク化。ホイールに直接取り付けるダイレクトドライブは、ギアの伝達損失や伝達遅れがないため、高効率で応答性が高いという。モーター内部のコイルや磁石も出力向上や高効率化のために見直している。

 インバーターとコンバーターは、モーターと一体化している。電線経路が最短になるため効率が高く、冷却系をモーターと共有することで効率化を図っている。基板は円環型で、ホイール内での容積効率を高めるとともに、電線経路を最短とすることで高効率化した。インバーターの内部には超小型SiCモジュールを採用。SiCモジュール内の基板には、ロームの開発中の技術を用いて片面冷却で両面冷却以上の低熱抵抗を実現した。SiCモジュールはロームが産業機械向けに量産する製品と比較して、5分の1に小型化している。

 コイルは、車両に搭載する受電側とインフラとなる送電側の両方を小型化し、受電側で53%、送電側で61%、容量を削減。給電効率は12kWから20kWに、コイルの効率は96.5%から98.1%に向上させた。給電の総合効率は20kWの給電で92.5%を達成した。

コイルも第2世代から改良(左)。超小型SiCモジュールを採用している(右)(クリックして拡大)

 受電コイルをタイヤ内に収めるため、タイヤの補強部材であるベルトも開発した。タイヤは接地面剛性を確保するためスチールベルトを採用しており、コイルの間をさえぎるため給電のロスが課題となる。ブリヂストンは、従来のスチールベルトに代わる非金属のみの有機繊維ベルトを開発。有機繊維ベルトの使用により、スチールベルトよりも給電効率を高められることを原理的に確認した。有機繊維ベルトは、スチールベルト比で強度は50%高く、スチールベルトと同等のタイヤとしての性能を確保。また、質量はスチールベルトより5%以上削減できるという。受電コイルをタイヤ内に収めるタイプ向けに、東レカーボンマジックとCFRP製のホイールの採用も検討している。

 今回発表した第3世代のインホイールモーターは、NSKなどが「第46回東京モーターショー2019」(一般公開日:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)でも展示する。

各社の分担
基礎研究統括 東京大学
車両やユニットの仕様策定 東京大学
モーター 機械部品の設計、製造 NSK
電磁部品設計 東京大学
磁石製造 TDK
電磁部品製造 東洋電機製造
インバーター 設計 東洋電機製造
デバイス設計 ローム
冷却構造設計 ティラド
整流器 設計 東洋電機製造
デバイス設計 ローム
コンデンサー製造 村田製作所
タイヤへの影響検討 ブリヂストン
受電コイル設計 東京大学
樹脂材料(タイヤホイール)への影響検討 東レカーボンマジック
評価装置設計 NSK
スマートフォンアプリ開発 カーメイト

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