テロ対策にも有効、ミリ波レーダーを利用した電波イメージング技術:組み込み開発ニュース
東芝は、ミリ波レーダーを利用して衣類に隠れた危険物を高精細に可視化できる、電波イメージング技術を開発した。立ち止まることなくウォークスルー方式による検査が可能で、利便性を損なわずに公共スペースの警備システムが構築できる。
東芝は2019年9月5日、ミリ波レーダーを利用して衣類に隠れた危険物を高精細に可視化できる、電波イメージング技術を発表した。
開発時に東芝が着目したのは、高性能化、低コスト化が進む車載用ミリ波レーダーだ。ミリ波は、衣服は透過するが、金属は反射し、爆薬などの粉体は吸収する性質を持つ。この性質を利用し、面状に配置したアンテナがミリ波レーダーによる反射信号を捉えて高精細なイメージング画像を生成する。
同社は、間隔の異なる2種類のアンテナを面状に設置して、得られた2種類のイメージング結果を合成することにより、対象物以外の余分な像を打ち消した高精細な画像を生成することに成功した。これまで、高精細な画像を得るには、2mmほどの半波長間隔でミリ波を照射する必要があり、アンテナ設置数やデータ量が膨大になっていた。この方法では、半波長間隔測定の約15%の測定数で高精細画像が得られる上、アンテナ数やデータ量が減り、導入コストを抑えられる。
同技術は、衣服に隠した危険物を検知できるだけでなく、立ち止まらずに、ウォークスルー方式で検査可能なため、人件費や設備費を抑えつつ、利便性を損なわずに公共スペースの警備システムが構築できる。
同技術の実証実験を実施したところ、衣服に隠れたモデルガンを高精細に可視化できた。同社は今後も研究開発を続け、2020年以降に、鉄道会社やアミューズメントパークと連携した実証実験を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新生東芝はなぜ「CPSテクノロジー企業」を目指すのか、その勝ち筋
経営危機から脱し新たな道を歩もうとする東芝が新たな成長エンジンと位置付けているのが「CPS」である。東芝はなぜこのCPSを基軸としたCPSテクノロジー企業を目指すのか。キーマンに狙いと勝算について聞いた。 - ミリ波レーダーに「60年に1度のパラダイムシフト」、高周波アンテナで新構造
日本電産は2019年4月12日、滋賀技術開発センター(滋賀県愛知郡)で説明会を開き、次世代高周波アンテナ技術について発表した。プリント基板を用いる従来のパッチアンテナとは異なり、金型成形で製造した金属製の導波路を重ねて3次元で配置する。これにより導波路損失やアンテナ効率をパッチアンテナの性能から改善するとともに、性能安定性を高めることができるという。 - カメラとミリ波レーダー、LiDARをラインアップ、1300万画素のイメージセンサーも
ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)は2019年6月18日、東京都内で記者説明会を開き、車載向けのセンシングソリューションのラインアップを発表した。 - 完全冗長EPS、次世代カメラやミリ波が2019年から量産、ボッシュの自動運転戦略
ボッシュは2019年6月25日、東京都内で年次記者会見を開き、2018年の業績と2019年以降に向けた取り組みについて発表した。 - 軽量で柔軟、5Gのミリ波帯域向け超低伝送損失アンテナ設計技術を開発
AGCは、ミリ波向け超低伝送損失フレキシブルアンテナ設計技術を開発した。伝送損失が低く、軽量で曲げられるため、車載機器や産業機器などさまざまな製品にミリ波向けアンテナを搭載できる。 - 有機半導体フィルムの光センサーで放射線のパルス検出に成功
東芝は、有機半導体を用いた高感度のフィルム型光センサーを開発した。シンチレータと組み合わせることで、放射線のパルス検出が可能になる。小型軽量で、曲面状化や大面積化ができるため、工業用や医療用など幅広い分野での利用が期待される。