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船はどうやって自動運航するのか、クルマから使える技術も自動運転技術(3/4 ページ)

東京海洋大学が、2019年9月4日と5日に東京都内で水陸連携マルチモーダルMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の実証実験を実施。この記事では実証実験と討論会における自動運航に関する内容について主に解説する。

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船舶の電動化は自動車以上に高いハードル

 東京海洋大学 学術研究院 海洋電子機械工学部門 教授の清水悦郎氏は、同大学が開発を進めている自動運航船システムを紹介した。清水氏はもともと新交通システムの船舶版の構築を目指しており、その一環として、環境負荷の低い電池推進船の開発を先行して進めてきた。これまで、「らいちょうI」(総トン数3.9t、全長10m)、「らいちょうS」(総トン数1.3t、全長8m)、「らいちょうN」(総トン数9.1t、全長14m)を建造している。


大型のソーラーパネルを設置しているが、これでも推進用バッテリーの充電には全然足りないという(クリックして拡大)

 電池推進船は、船舶機関で主流のディーゼルエンジンと異なり、NOx排出量が少なく低騒音、低振動である他にも、回転数制御が容易であることやメンテナンスが容易であるなど、操船や運用面でもメリットがある。その一方で、電動化の対象にできる小型船舶の数が約35万隻と自動車に比べてはるかに小さく、量産効果が出しにくいことや、急速充電に対応できる充電ステーションを港湾にまとまった数を設置するのは地域における電力供給の負荷的にも難しいなど、普及が進まない事情があることを清水氏は明らかにしている。

 なお、今回の実証実験に用いた「らいちょうI」はキャビン天井甲板一面にソーラーパネルを設けているが、蓄電できるのは、推進用システムで必要となる電力の10分の1にすぎない。そのため、現時点では推進用バッテリーではなく、舶用機器の駆動電力の一部として使用している。

 自動運航船の研究も船版新交通システム構築の一環といえる。こちらの開発では「らいちょうI」に陸上に設けたコントロールセンターの遠隔操船システムとの接続に使う無線LANアンテナ(2.4GHz帯使用)、周囲見張り用の監視カメラ、自動離着桟用のレーザー光測距儀(3D LiDAR)、遠隔操船システム(受信した操船指令に従って舵角とスクリュー回転数を変更する)を搭載して実証実験を重ねている。

遠隔操船中の様子(左)。舵輪にもエンジンスロットルにも触れていないのに加速して針路を変える(右)(クリックして拡大)

 東京海洋大学が構築した自動運航船のシステムでは、陸上に設けたコントロールセンターから実施する遠隔操船が重要な役割を果たす。これは、陸上の新交通システムが総合指令室を設けて遠隔監視を実施している事例に倣うためと清水氏は説明する。「新交通システムを水上(船舶)で作る場合も、遠隔監視ができる総合指令室のようなコントロールセンターは必要だろう」(清水氏)

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