“暮らしアップデート”の基盤担うパナソニック電材事業、そのモノづくり力(前編):製造業がサービス業となる日(1/2 ページ)
“暮らしアップデート業”を掲げるパナソニックだが、その基盤を担うと見られているのが電設資材事業である。その戦略と、中核工場である瀬戸工場のモノづくり力を前後編に分けて紹介する。
「パナソニック製品は10億人に毎日使われている」――。こう聞くと「そんなにパナソニック製品を持っていないのになぜ?」と感じるかもしれない。その答えとなるのが、パナソニック ライフソリューションズ社 エナジーシステム事業部が扱う、配線器具や電路機器、配管機材などの電材製品群である。
例えば、暮らしの中で照明スイッチを全く押さずに暮らす人はほとんどいないだろう。パナソニックは、照明スイッチを含む住宅用の配電器具や電路機器で大きなシェアを持つ。国内においては、工事用配線器具や住宅用分電盤、電線管の1位(パナソニック推定、金額シェア)となっている。海外でも中国を除くアジア地域の大半の国でシェア1位を占めている(同社調べ)。こうした“見えない高シェア製品”が人との接点(タッチポイント)を担い、暮らしを支えているというのがパナソニックの特徴なのである。パナソニックではこの特徴を活用して「暮らしアップデート業」として新たな価値創出に取り組み始めている。
本稿では、配線器具や電路機器を含む電設資材事業の取り組みを前編で紹介する。後編ではこれらを支え電路機器の戦略工場と位置付けられているパナソニックスイッチギアシステムズ 瀬戸工場(愛知県尾張旭市)の自動化、スマート化への取り組みを紹介する。
タッチポイントを握るパナソニックの強み
パナソニックでは2018年度に100周年を迎え「家電の会社から暮らしアップデート業の会社になる」と宣言(※)。そして、この取り組みを実現するために“家庭のタッチポイント”を強化する方針を示している。そのカギを握る商材の1つが配線器具や電路器具など家庭内で「知らない間に使っている」商品群である。
(※)関連記事:「人の幸福から離れて、生き残る会社はない」パナソニック津賀社長
パナソニックは「アタッチメントプラグ」が創業商品で、配線器具事業が祖業である。これらの配線器具を基軸とし、電路機器、配管機材を100年にわたって継続し発展を実現してきた。現在では配電インフラ事業からエネルギーマネジメント事業へと拡大が進んでいるところだ。
パナソニックでは、エンドユーザーとなる一般消費者に快適性を届けるだけでなく、これらの機器導入に関わる施工業者の負担を軽減する施工性に優れている点などが特徴だ。これらが評価を受け、住宅用の照明スイッチや分電盤、電線管などで、国内で高シェアを握っている。
単体製品の価値を「空間ソリューション」へと進化
パナソニックでは単体製品レベルでの高シェアを基盤とし、これらを生かしたソリューション提案を
強化する方針である。「タッチポイント」のIoT(モノのインターネット)化やAI(人工知能)化により強化し、「空間ソリューション」としての価値実現を目指す。
パナソニック ライフソリューションズ社 エナジーシステム事業部 パワー機器ビジネスユニット長 白澤満氏は「われわれが扱う商材は住宅新築着工数に大きな影響を受けるが、日本の住宅新築着工数は減少傾向なのが明らかだ。一方で非住宅市場については堅調な予測が示されているが、全体的には厳しい状況だといえる。その中で、国内では高シェアを生かして、センシング技術やIoT、AIを組み合わせたタッチポイントの進化に取り組む。IoTやAIを組み合わせることで空間の快適性を作る空間ソリューションとしての提案に発展させていく」と方針について語っている。
具体的には照明スイッチやコンセント、住宅用分電盤などのタッチポイントの情報を取得することにより、人々の生活状況をより具体的に把握できるようになる。これらの情報を基に新たな暮らし価値を提案し、人々の生活をより快適にしていくことを目指していく。「単機能製品の提案から、システム価値提案へとシフトしていく」と白澤氏は語っている。
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