複数企業間のサプライチェーンを最適化、AIと高速DB採用SCMのo9が日本参入:製造ITニュース
サプライチェーンマネジメントソリューションを展開する米国o9 Solutions(オーナインソリューションズ、以下o9)は、日本法人であるo9 ソリューションズ・ジャパンを設立し、日本での取り組みを本格化することを明らかにした。
サプライチェーンマネジメントソリューションを展開する米国o9 Solutions(オーナインソリューションズ、以下o9)は、日本法人であるo9 ソリューションズ・ジャパンを設立し、日本での取り組みを本格化することを明らかにした。
o9は2009年に米国テキサス州ダラスで創業。会長兼共同創設者であるサンジブ・シドゥ(Sanjiv S. Sidhu)氏は、サプライチェーン管理ソフトウェアの先駆的企業となったi2テクノロジーズ(現在はJDAソフトウェアに買収)の創業者の1人である。
日本市場での本格展開についてo9 ソリューションズ・ジャパン 副社長 営業統括 川浦和明氏は「約20年前にSCMシステムを導入してその後、手を入れられていないケースが多く、新たな技術を加えて再提案する余地があると考えた」と述べている。
AI予測モデルとグラフ・キューブDB
o9は2014年に製造現場の計画プロセス改善を実現するAIソリューションをリリースしこれが評価を受け、現在までにグローバルで約30社の導入実績を持つという。評価を受けた背景として、o9が開発したAIを活用した予測モデルと、サプライチェーン管理に特化したグラフ・キューブDB(データベース)がある。加えて、インメモリデータベース技術と独自の並列処理技術により、さまざまなデータ処理を高速で柔軟に行えるという点がある。
具体的なメリットとして、従来技術ではデータ量や変数が膨大になり過ぎてコストや実運用を考えた場合には実現が難しかった、複数企業間のサプライチェーンの最適化などを実現できる。例えば、ある製品の製造を行う場合自社の情報に加えて、1次サプライヤー、2次サプライヤー、3次サプライヤーなどの情報を統合し、サプライチェーン全体の情報を把握しながら最適な管理を行うようなことが可能となる。
o9 ソリューションズ・ジャパンのバイスプレジデントである原田健司氏は「新たな技術を基盤として、サプライヤーからメーカー、小売りまでを一貫して結ぶことが可能となる。その中で最適な判断が下せるようになることでサプライチェーンのリスクを低減できる他、無駄なコストやリードタイムなどを削減できる」ともたらす価値を強調する。
さらに具体的な例として米国のアパレル企業の事例を紹介した。「ある米国アパレル企業ではo9の導入によりSCM改革を実現した。従来はディストリビューションをどう最適化するかという観点で短期視点での管理だったが、o9を導入することで縫製や調達など上流まで一貫した管理が行えるようになった。2年後の需要を見据えて、縫製をどう最適化するか、布をどう調達するかなどの観点で運営を行えるようになった」(原田氏)。
年商500億円規模の製造業でも効果を発揮
o9によるSCMソリューションは、SaaS(Software as a Service)モデルで提供する。導入金額については「導入規模や機能などによって変わるが、年間3000万円規模での導入が可能」(川浦氏)。グローバルオペレーションなどサプライチェーンが複雑化してきた企業が対象で「そういう企業であれば年商500億円規模でも効果を出せる」と川浦氏は語っている。
提案については、直接販売とパートナー販売を組み合わせて行う方針。新たなパートナーなども募集するとしている。
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