ニュース
加速度1μGの検出を可能にするMEMSセンサーを開発:組み込み開発ニュース
NTTアドバンステクノロジと東京工業大学は、複数の金属層から形成される積層メタル構造を用いた低ノイズ・高感度のMEMS加速度センサーを開発した。同サイズのセンサーと比べて、ノイズ10分の1以下、感度100倍以上を達成している。
NTTアドバンステクノロジは2019年7月23日、東京工業大学と共同で、複数の金属層から形成される積層メタル構造を用いた、低ノイズ・高感度のMEMS加速度センサーを開発したと発表した。医療やインフラ診断、移動体制御、ロボットなどでの利用を見込む。
両者は過去に、金材料を用いてMEMS加速度センサーの錘(おもり)を従来の10分の1以下に小型化することに成功。今回は、この技術を発展させ、積層メタル構造を錘やばねに用いたMEMS加速度センサーを開発した。
具体的には、金の層を複数重ねてMEMS構造を形成し、面積当たりの錘質量を増やしてノイズを低減した。また、錘の反りを低減して、感度(加速度当たりの静電容量変化)を増大。4mm角チップに実装した静電容量センサーは、同サイズのセンサーと比べて、ノイズ10分の1以下、感度100倍以上を示した。従来の小型シリコンMEMS加速度センサーでは難しかった、1μGレベルの検出が期待できる。
MEMS製造には、半導体微細加工技術と電解金めっきを使用。そのため、集積回路チップ上にこのMEMS構造を形成可能で、汎用性も高い。人体行動検知による医療・ヘルスケア技術、振動検知によるインフラ診断、ロボティクス、自動航行制御システム、宇宙空間での計測など、さまざまな分野での応用が期待できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- いまさら聞けない加速度センサ入門
使用用途が拡大し、いまや民生機器への搭載も広がっている「加速度センサ」について、その概念をあらためて解説する。 - 3軸加速度センサで学ぶアナログの世界
今回のテーマは“アナログ”。3軸加速度センサのアナログ信号をADCでデジタル信号に変換し、その値をLEDに表示させる。 - MEMSでも10kHzの測定が可能なIoT対応の小型振動センサー
IMVは、IoT対応の小型振動ピックアップ(振動センサー)「VP-8021A」を発表した。アナログ・デバイセズの高周波加速度センサー「ADXL1002」を採用し、MEMSでも10kHzの測定ができる。 - パイオニアの救世主となるか、MEMS方式LiDARが量産に近づく
パイオニアは2018年10月10日、東京都内で記者会見を開催し、同年9月からサンプル出荷している車載用MEMSミラー方式LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の2018年モデルについて説明を行った。同社は同方式ライダーの量産準備を2019年にかけて行い、顧客の求めに応じて2020年以降より量産開始する予定だ。 - AIと3Dプリント技術を活用し、MEMSセンサーの製造期間を短縮
日立製作所は、新たに開発した半導体向け3Dプリント技術を活用することで、MEMSセンサーの製造期間短縮が可能になると発表した。適用事例では、振動MEMSセンサー100個を1カ月で設計・製造可能になることを確認した。 - MEMS 6軸力センサー付き把持鉗子で肺がんのサイズと位置を算出
東京大学は、内視鏡手術用把持鉗子の先端に取り付けたMEMS 6軸力センサーの触覚情報から、肺がんのサイズと位置を算出する手法を開発した。手術中に術者が腫瘍の正確な位置を把握でき、患者と術者双方の負担が減る。