中小製造業における経営者の引退で生まれる問題:2019年版中小企業白書を読み解く(3)(5/7 ページ)
中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、4回に分けて紹介している。第3回は、中小企業における世代交代の実態について紹介する。
廃業とそれに伴う経営資源の引き継ぎ
次に引き継ぎの中の一形態である、「廃業した経営者」における経営資源の引き継ぎの実態を明らかにする。まず、廃業する企業からの再就職や独立を希望する従業員の実態や課題についてスポットを当てたい。
図14は、経営者が引退を決断してから引退するまでの間に再就職や独立を希望する従業員がいたかを示したものだが、廃業した企業のうち4割弱に再就職や独立を希望する従業員がいることが分かる。
その中で「経営者の支援により再就職や独立が決まった従業員が1人以上いた」とする割合は約半分となっている。また、従業員の再就職先について見ると、同業種が中心となっていることが分かる(図15)。
販売先や顧客の引き継ぎについては、約6割の廃業企業が継続的に取引のある販売先や顧客を保有している。そのうち、65.6%が他者に引き継いでいる(図16)。
事業用設備の引き継ぎについては、約6割の廃業企業が、事業用設備を所有しており、そのうち、53.6%が他者に引き継いでいる(図17)。
さらに事業用不動産につては、事業用不動産を所有している36.1%の廃業企業のうち、48.2%が他者に引き継いでいることが分かる(図18)。
これまで、事業承継に向けた取り組みや、廃業とそれに伴う経営資源の引き継ぎの取り組みについて詳しく分析してきた。では、実際に経営者が引退に向けて事業承継を選択すると、どのような課題に直面するのだろうか。経営者引退を決断した時点での事業の状況や、引退に際しての課題などについて、「事業承継した経営者」と「廃業した経営者」を分けて見ていく。
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