笑いの測定方法を開発、笑いが緊張・不安などを改善することを実証:医療技術ニュース
近畿大学は、笑いを医学的に検証する共同研究を実施し、笑いの測定方法を開発するとともに、笑いがもたらす身体的および心理的影響を解析した。
近畿大学は2019年7月11日、同大学医学部 教授の小山敦子氏らの研究グループが、吉本興業、オムロン、西日本電信電話(NTT西日本)と共同で、笑いを医学的に検証する共同研究を実施したと発表した。笑いの測定方法を開発するとともに、笑いがもたらす身体的および心理的影響を解析した。
実験では、「笑い」を、「コメディアンが参加者を笑わせられる状況を作り出して、参加者が笑ったこと」と定義。表情をスコア化する方法で笑顔を数値化し、笑顔と身体的・精神的指標の変化を調査した。
参加者の笑いを引き出す方法として、吉本興業が吉本新喜劇、漫才、落語を提供した。オムロンは参加者の表情データの測定を、NTT西日本は心拍数と呼吸のバイタルデータの測定を担当した。
笑顔の数値化では、オムロンのHVC(Human Vision Components)を利用し、2週間間隔で計3回、表情データを収集した。HVCは、人の表情について5分類の変化「真顔」「喜び」「驚き」「怒り」「悲しみ」を捉えられる。
同研究では、5分類の変化のうち「喜び」と「驚き」に注目してデータを収集した。同時に、バイタルデータも測定し、全体、性別、笑いの度合いの3グループに分けて解析。6つの尺度「緊張・不安」「抑うつ」「怒り・敵意」「活気」「疲労」「混乱」で参加者の気分や感情を測定したところ、笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善した。
グループ別では、男性は「緊張・不安」「怒り・敵意」のスコアが、女性は「混乱」のスコアが改善した。また、「笑い」の度合いが高いグループでは、「緊張・不安」「抑うつ」「怒り・敵意」で改善が認められた。これらの結果から、心から笑いを楽しめた人は、笑いの効果がより見られる傾向にあることが分かった。
今後は、被験者のタイミングや状況によって効果に違いが出るかを検証する。第1弾として、吉本興業の公演の観客を対象に、笑いを必要とする状況を聞き取り、その上位となった状況に該当する被験者を集めて、笑いの効果を検証する予定だ。
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