ニュース
核医学治療中に放出されるα線放出核種の検出に成功:医療技術ニュース
名古屋大学は、核医学の治療中に放出されるα線放出核種の検出に成功した。治療で放出されるα線放出核種の計数は、自然界にあるラドン娘核種に比べると多くないため、現状では大きな問題にならないことも分かった。
名古屋大学は2019年7月4日、核医学の治療中に放出されるα線放出核種の検出に成功したと発表した。この成果は、同大学大学院医学系研究科教授 山本誠一氏らの研究グループによるものだ。
山本教授らは、自然界に存在するRn-222のみを計測する「空気中ラドン濃度検出器」と、Rn-222娘核種とRn-219娘核種を計測する「空気中ラドン娘核種計測装置」を新たに開発した。
核医学治療をした時としていない時に、2つの検出器を用いて測定したところ、自然界に存在するラドン濃度の変化とは別に、一時的なラドン娘核種のα線計数変化が検出された。この結果は、核医学治療をした日時と合致しており、検出されたα線は核医学治療で使われるラジウム-223娘核種由来のものであることから、治療に伴い放出されたα線放出核種と判明した。
核医学治療で放出されるα線放出核種の検出計数は、自然界にあるラドン娘核種の計数に比べると多くないため、現状では大きな問題にならないことも分かった。
核医学治療に用いるラジウム-223は、安定へ向けて壊変を繰り返す間に、気体の放射性核種であるRn-219を経由する。Rn-219が患者の体内から体外に出て拡散すると、患者以外の人が放射線に被曝する可能性が懸念されていたが、検出方法や自然界の放射性物質との弁別方法が確立されておらず、患者以外の人への影響は不明だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 細胞と細胞を張り合わせるタンパク質の構造を原子レベルで解明
名古屋大学は、X線結晶構造解析手法を用いて、細胞同士を密着させてバリアを形成するタンパク質の1種「クローディン3」の構造を原子レベルで明らかにした。 - ナノワイヤで微生物を簡単に破砕、家庭でも病原性微生物の判定が可能に
名古屋大学は、微生物を簡単に破砕して、微生物の種類を特定する新技術を開発した。同技術を活用することで、今後、O-157のような菌の有無を家庭などで容易に検査できるようになり、感染症の予防につながることが期待される。 - 緑内障手術練習用の眼球モデルを開発
名古屋大学、東京大学、三井化学は共同で、ヒトの強膜の感触を再現した緑内障手術練習用眼球モデルを開発した。眼科手術の基本かつ高度な手技である強膜の薄切りや縫合を、実際の手術と同様の感触で練習できる。 - 肥満を抑制する原因遺伝子として「Ly75」を同定
名古屋大学は、肥満を抑制する遺伝子「Ly75(Lymphocyte antigen 75)」を同定した。また、Ly75の遺伝子型とmRNA発現量、白色脂肪組織重量との間には因果関係があることを明らかにした。 - 人間そっくりな眼科手術シミュレーターに緑内障眼球モデルを追加
名古屋大学は、人間そっくりな眼科手術シミュレーター「バイオニックアイ」に搭載可能な、低侵襲緑内障手術用眼球モデルを開発した。精密な隅角構造とシュレム氏管の管腔構造を備え、模擬血液として赤インク水溶液を注入できる。