岐路に立つJDI、“B2C”の新規事業は起死回生の一手になるか:イノベーションのレシピ(2/3 ページ)
厳しい経営状況に直面するジャパンディスプレイ。同社は起死回生の一手として2018年4月に新規事業プロジェクト「JDI Future Trip Project」を立ち上げ、2019年度内にB2C製品を販売開始する予定だ。同事業で部長を務める井戸靖彦氏を始め、JDIの起死回生を担うメンバーたちに新規事業と製品にかける思いを聞いた。
市販化間近の製品3点を紹介
マーケティング&イノベーション戦略統括部に所属する技術者は16人。2〜4人で開発グループを組み、新製品開発にあたっているという。同部署の中で、市販化が近い3製品の開発を担当する技術者に話を聞いた。
オートバイ向けHUD「XHD-03」、他社製液晶パネルを採用
「XHD-03」はオートバイ向けヘッドアップディスプレイだ。ディスプレイユニットはヘルメットのバイザー部分に着脱可能で、スマートフォンの表示画面をそのまま視界に投影する。スマートフォンのナビゲーションアプリと連携することで、視点を動かすことなく速度や経路案内、到着予定時刻などを確認できる。本体の軽量化を狙い、電源はモバイルバッテリーなどからUSB給電で確保する。想定販売価格は500米ドル前後という。
「JDIはディスプレイメーカーとしてクルマ用HUDパネルを納入していた。これを活用して何かできないかと考えた」(同社担当者)ことが新製品の着想だった。2018年4月から開発を進め、同年8月の事業戦略発表会ではヘルメットと融合した「XHD-01 スパルタ」を発表。「これまで3回くらい大きな仕様変更を行った」ことで、バイザーに着脱する外付けタイプのHUDへと変貌を遂げた。
また、同モデルでは搭載するHUD用液晶パネルを自社製品から他社製品に変更している。競合他社製品の採用は量産化に向けた意思の表れとし、「あくまでも発想の入口が自社のパネルであっただけ。プロダクトアウトではなくマーケットインの志向だ」と担当者は述べた。今後、量産に向けて防水性能の向上や筐体デザインの変更を行うとし、日本および海外市場で製品展開を狙う。
同社はオートバイライダーに向けたPR活動を進めており、「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(2019年7月25〜28日、鈴鹿サーキット)では体験コーナーを出展する。また、CES Asia 2019では「中国は大型バイクに乗りにくい環境だが、バイクに乗らない人からのフィードバックも得られた」(同社担当者)。次世代製品ではオートバイ以外のヘルメット着用シーンに向けて開発し、提案を進める考えだ。
キャラが音楽に合わせダンスする「LPX-01」、継続収益ビジネスにも
LPX-01は6.0型ディスプレイとマルチウェイスピーカーを組み合わせ、ユーザーに「見る音楽体験」を提供するデバイス。専用コンテンツをダウンロードし、同製品で再生するとキャラクターが音楽に合わせてダンスをする。「キャラクターが登場する類似製品は高額なものが多いが、LPX-01はリーズナブルな価格設定とする」(同社担当者)とし、想定販売価格は450米ドル以下になる予定だ。
LPX-01の開発は2018年8月からスタートした。JDIが得意とする超狭額縁液晶ディスプレイ「FULL ACTIVE」(1080×2160、403ppi)を活用するとともに、「立体的な映像表現を追求するため、狭額縁技術や高透過技術など独自技術を投入した」(同)。また、同製品で重要な要素となるコンテンツ面では複数企業と協業の交渉を進めており、「強いキャラクターIP(知的財産)をそろえる」方針だ。コンテンツの販売はキャラクター単位の買い切り型課金を検討しており、リカーリングビジネス型の製品となる見込み。
CES Asia 2019では多くの来場者から良い反応が得られたという。同社担当者は「グローバルニッチだが、熱狂的なユーザーがいる市場。日本と中国の同時販売を狙う」と述べ、2019年12月末からの店舗での予約開始を見込んでいる。
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