検索
連載

エレメカ協調設計に備えよ! メカ設計者が知っておくべき電気/電子の基礎知識ママさん設計者が教える「メカ設計者のための電子回路超入門」(1)(2/2 ページ)

電気やプリント基板の設計と、メカ設計がシームレスに連携する“エレメカ連携(エレメカ協調設計)”をテーマに、ママさん設計者が優しく教える連載。第1回は、メカ設計者が知っておくべき電気/電子の基礎知識を取り上げます。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

メカ設計者のための電気/電子入門

 恐らく多くの方が、製品の電源ボタンを押したり、他のボタンを押したりする際、「このボタンを押した後、製品の中で一体何が起こっているのか」をいちいち深く考えることはしないでしょう。利用者であればそれでもよいのですが、エレメカ協調設計のスタート地点に立とうとされているメカ設計者の皆さんは、ぜひ一歩踏み込んで、このとき製品の中で何が起きているのかをちょっと想像してみてください。

 では、照明を例に考えてみましょう。コンセントに電源コードを挿し込んで、スイッチをONにすれば照明が点灯します。別の言い方をすると、「コンセント内で待機していた電気が照明器具に伝わったことで照明が点いた」と表現できます。

 その仕組みを解説する前に、「電気」と「電子」の違いについて触れておきます。ご存じの通り、電気には「(プラス)」と「(マイナス)」の電荷があり、このプラスとマイナスが引き合って電気エネルギーが発生します。このとき、電気のプラス側に引き寄せられて移動するのが電子です。電子はマイナスの電荷を帯びており、マイナスからプラスに向かって移動します。その際の電子の量が「電流」であり、引き寄せる力が「電圧」です。電流はプラスからマイナスに流れるものですが、電子の流れは“逆方向”になります。これは単に「電流はプラスからマイナスに流れる」と定義した後に、電子が発見されたためで、ここをとことん追究しても仕方がないので、「電子の流れる方向と電流の流れる方向は“逆”」とだけ覚えておいてください(図1)。

図1 電流と電圧について
図1 電流と電圧について

 電子の移動の説明で理解できたかもしれませんが、「コンセント内で電気が待機している」というのは、要するに「100V」あるいは「200V」という“電圧の状態”のことであり、「コードをつないだら電気が流れて照明が点灯した」というのは、そこに流れた“電流の状態”のことを意味します。つまり、一般的に「電気」と呼んでいるのは電圧や電流という“エネルギーの状態”で、電圧と電流を掛け合わせたものが“電気の仕事量=「電力」”となります。これに対し、電子は“エネルギーを生む物質そのもの”といえます。

 次に、この様子をオームの法則に当てはめて見てみます。ご存じの方も多いと思いますが、オームの法則とは、何はともあれこれだけは知っておくべき電気の法則の1つです。式にすると次のようになります(式1)。

電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)

 この式の意味は「物体に流れる電流は物体に加えた電圧に比例し、その物体の抵抗には反比例する」というものです。何だかややこしそうですが心配いりません。

 ここで初登場の「抵抗(R)」とは何であるかを説明すると、その名の通り“その物体への電流を流しにくくするもの”です。抵抗の単位は「オーム(Ω)」です。電気を「水」に置き換えて、電圧、電流、抵抗の関係を図にしたものが以下となります(図2)。

図2 電圧、電流、抵抗の関係
図2 電圧、電流、抵抗の関係

 オームの法則では、電圧、電流、抵抗のうち“2つ”が分かっていれば、式を入れ替えることで、残りの1つも簡単に求めることができます。

  • 電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)
  • 電流(I)=電圧(V)÷抵抗(R)
  • 抵抗(R)=電圧(V)÷電流(I)

 コンセントにつないでスイッチをONにしたら照明が点灯したのは、内部で電流が流れた結果です。この様子を図で表したものが以下です(図3)。

図3 照明が点灯する回路について
図3 照明が点灯する回路について

 電流はプラスからマイナスへ流れます。その経路の途中に電球があり、電球に電流が流れた結果、点灯したのです。“点灯した”ということは、さっさとマイナスに向かって流れたい電流にとって、電球は行く手を遮る抵抗として作用したといえます。そして、この電流の経路こそが回路なのです。

 電球の能力は通常、「W(ワット)」という電力の値で表現され、定格電圧が決められています。電力とは電気の仕事量のことで、その求め方は「電圧×電流」です。ですから、仮に100Vの電源を使って100Wのランプを点灯したいのであれば、「100V×1A=100W」となり、“1A以下の電流を流せばよい”という結果になります。

 では、100Vから1Aの電流を流すための抵抗の値はどうすればよいのかを、オームの法則で計算してみます。

1A=100V÷○(R)

 この式を入れ替えると「○(R)=100V÷1A」です。つまり、答えは「100Ω」ということになります。この法則は忘れないようにしましょう!



 さて今回は、エレメカ協調設計のスタート地点に立ったメカ設計者の皆さんを対象に、“電気/電子の基本的な知識”について解説しました。次回は、回路図と配線パターン図について説明する予定です。お楽しみに! (次回に続く

Profile

藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る