製造業が今、ソフトウェアビジネスに力を入れるべき理由:サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(1)(3/3 ページ)
サブスクリプション、IoT、AI、DXなどの言葉では、全て「ソフトウェア」が重要な役割を果たしている。本連載では、製造業がただ製品を販売するのではなく、販売した先から安定した収入を将来に渡って得ていくために、ソフトウェアによって価値を最大化させ、ビジネスを収益化していくノウハウについて紹介していく。
製造業に新たな収益機会を創造するソフトウェアの収益化
ソフトウェアの収益化とは、簡単に言ってしまえば、ライセンス管理技術を活用して、コストを削減し、収益を向上させるアプローチのことである。ソフトウェアで最も重要な「マネタイズ」を担っており、ソフトウェアビジネスで必ず直面するであろう問題を解決に導くことが可能だ。現状分析、課題抽出、ビジネスインパクト、コストメリットを算出してソフトウェアの価値を最大化させるソリューションやライセンスモデルの提案を行う。
しかし、サブスクリプションなどの新しいライセンスモデルを導入する場合に、間違った考え方で取り組む企業があまりに多いことに驚く。ソフトウェアビジネスやライセンシングはエンジニアリソースを割り当てれば実現できるような、そんな簡単なものではない。
例えば、市場の動向に応じたフレキシブルなライセンシングによる契約の履行と管理、エンタイトルメント管理と自動化によるライセンシング業務の効率化。エンドユーザーによるセルフサービスやカスタマーエクスペリエンスの向上による契約離反率の低減。従来とは異なるライセンス体系と考え方、ハードウェアとは完全に異なるコスト構造、会計処理の違いにも理解が必要である。
ソフトウェアは、製造業にとって新たなビジネスチャンスをより多く獲得できる可能性を秘めている。しかし、ソフトウェアビジネスはハードウェアビジネスとは全く異質なものである。製造業の今までのやり方でソフトウェアの収益化に取り組むのは簡単ではない。だからと言って、先細りが分かっている従来のビジネスをそのまま継続していくのか、それとも時代の変化に対応して企業の姿勢としてマインドチェンジしていくのか、今がまさにその変化の時である。
製造業にとって、このビジネスモデルの転換の波は、今後の行方を左右する極めて重要なタイミングである。そこで次回からは、製造業のサービスビジネスやソフトウェアビジネスを展開するにあたり、ライセンス管理がビジネスにどのようなインパクトを発揮するのか、具体的な方法を交えながら導入プロセスを明らかにしていきたいと思う。
筆者プロフィール
前田 利幸(まえだ としゆき) 日本セーフネット株式会社/タレス・グループ クラウドプロテクション&ライセンシング ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント
ソフトウェアビジネスに取り組む企業に対して、マネタイズを実現するためのコンサルティングやトレーニング、ソリューション提案を実施。全国各地で収益化に関するセミナーや講演活動を展開。IoT関連企業でシニアコンサルタントを経て現職。同志社大学 経営学修士(MBA)。二児の父。
https://sentinel.gemalto.jp/software-monetization-solutions/
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