製造業はIoTを収益化できるのか、ソフトライセンス管理の仕組みで実現:製造業IoT(1/2 ページ)
デジタルセキュリティベンダーのGemalto(ジェムアルト)が、IoT(モノのインターネット)サービスの収益化ソリューションなどについて説明。同社が世界トップシェアを握るパッケージソフトウェアなどのライセンス管理の仕組みを適用することで、製造業がIoTを活用したサービスに取り組む際の課題として挙げられている収益化に貢献できるとした。
Gemalto(ジェムアルト)は2016年9月6日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)サービスの収益化手段や、IoTセキュリティの動向などについて説明した。
ジェムアルトはオランダに本拠を置くデジタルセキュリティベンダーだ。SIMカードやICカードなどのセキュリティに関わるエッジデバイスを供給するとともに、クラウドやデータセンターなどバックエンドシステムでのセキュリティソリューションも提供している。同社の事業領域は「モバイル」「ファイナンシャルサービスおよびリテールサービス」「エンタープライズセキュリティ」「政府機関」「交通機関」「ソフトウェアベンダー」の6つに分かれている。
同社アジア・パシフィック地域&チャネルマーケティング ディレクターの鈴木信太郎氏は「最近になって、これら6つの分野にまたがる大きな市場が生まれつつある。それがIoTだ」と説明する。2016年時点でIoTの数は64億と想定されているが、2020年までには500億に増えるとみられている。「この巨大市場になるIoTに信頼性を提供できるのが当社だ。Connect(接続化)、Secure(セキュア化)、Monetize(収益化)までカバーできる企業は少ない」(鈴木氏)という。
「今の時代、全てはソフトウェアだ」
IoTサービスの収益化については、同社ソフトウェアマネタイゼーション事業部 シニアプリセールスコンサルタントの前田利幸氏が説明した。ジェムアルトは、ソフトウェアのライセンス管理や収益化を行うソリューションの市場で、世界シェア52%とトップに立つ。前田氏は「当社がソフトウェア収益化で最も注目しているのが、組み込みソフトウェアを利用するインテリジェントデバイス、すなわちIoTを開発しているデバイスメーカーだ」と強調する。
前田氏は、General Electric CEOであるジェフリー・イメルト(Jeffrey Immelt)氏の「製造業とソフトウェアの世界には大きな隔たりがあるという概念はもう通用しない。そんな日々は終わった、今の時代、全てはソフトウェアだ」という言葉を引用。その上で「IoTによって、製品の差異化要因はデバイスそのものではなく、組み込まれたソフトウェアにある。そしてそのソフトウェアによって生まれるIoTサービスを収益化するには、適切なソリューションが必要だ」(同氏)とした。
ジェムアルトは、一般的なパッケージソフトウェアについて、ライセンシングや利用状況追跡、エンタイトルメント管理などのソリューションを提供している。最近ではこのライセンス管理をクラウドで行うことも多い。このソリューションを、インターネットとつながるようになったIoTのソフトウェアにも適用したい考えだ。
その際に役立つのが、ソフトウェアを機能別に分けてそれぞれをライセンス管理する「機能別ライセンシング」だ。顧客が求める機能を選んで有効化させることにより、安価で最低限の機能を持つ「エントリー」、中程度で価格と機能を両立した「ミドルレンジ」、高価だが豊富な機能を持つ「ハイエンド」と製品グレードを分けることができる。前田氏は「ハイエンド向けに顧客単価を上げつつ、エントリー向けには単なる値引きではない形で安価にして広い顧客層に訴求できる」と説明する。
またライセンスモデルも、月次や年次で契約するサブスクリプションや、買い取りとなる永久ライセンスなどを選択できる。「あるネットワーク機器のお客さまは、共通のハードウェアを使って、機能別ライセンシングの仕組みで有効化するソフトウェアを変更することにより複数種類の製品を量産している」(前田氏)という採用事例も明かした。
同社のソフトウェア収益化ソリューションのデバイスメーカーの顧客は、産業機器や医療機器、通信機器、ビル管理、計測機器、ゲーム機、デジタル印刷など幅広い分野にわたる。今後、IoTサービスの収益化を目指す企業がジェムアルトの顧客から出てくるかもしれない。
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