この記事は、2019年7月4日発行の「モノづくり総合版 メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
「日本の経営者はだめだ」はもう聞き飽きた
シャープが経営再建のために銀行から借り入れた有利子負債を完済したニュースが話題になりました。これで経営再建に向けた負の資産とは決別し完全に新たな成長への道へと舵を切ることになります。
ここで注目されたのが、シャープの代表取締役会長兼社長である戴正呉氏の手腕です。経営危機に際し、シャープは世界大手のEMS企業である鴻海精密工業の傘下となりました。戴氏はここでシャープの再建を託されて鴻海精密工業から派遣されたわけですが、約3年で見事に結果を残した形となります。ただ、これだけで終わらず「これに引き換え日本の経営者は……」というような議論なども巻き起こっています。
筆者は電機業界の担当記者をしていた時期が長くあります。その中で、今は「失敗だ」とされてきた、過去の経営者たちの判断をリアルタイムに取材を通して見てきましたが、恥ずかしながら、当時はこうした数々の決断を失敗だと判断することはできませんでした。そういう意味では、筆者自身ではこうした決断を批判する権利はありませんし、経営者の決断というものがそれだけ難しい中、復活を遂げたシャープと戴氏の取り組みにはあらためて敬意を表したいと思います。
さて、この「日本の経営者はだめだ論」は非常に根深く、今回のように外国人経営者が成功を収めた場合などでも盛り上がりますが、新たな技術トレンドが出た場合なども「日本は遅れている論」と組み合わせられた形で盛り上がります。海外企業の経営者はリスクを取って先進技術を採用しているのに、それに引き換え日本の経営者は取り組みが遅いというような論法です。
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