高度なデジタルツインを実現し、顧客企業のデジタル変革を加速させるPTC:LiveWorx 2019(2/3 ページ)
PTCの年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx 2019」の基調講演に登壇した同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン氏は、「Digital Transformation:Harnessing New Technology for Industrial Innovation(DX:産業革新のための新技術の活用)」をテーマに、デジタルトランスフォーメーションの重要性や、その実現を支えるPTCの最新の取り組みについて紹介した。
ARで熟練者と同等レベルの作業を実現
次に紹介したのは、トラックエンジンの組み付け検査の工程だ。通常こうした検査は熟練作業者の経験やノウハウが必要であり、人材育成にも時間がかかっていた。そのため、現場からは検査の質を落とすことなく作業を効率化できる仕組みが求められてきた。こうした要求に対し、この工程では「iPad」を用いた品質検査を実現。専用のiPadアプリでエンジンの形状を認識させると、AR空間上に作業内容や手順などが表示され、確認内容のチェックなどが行える様子を紹介した。これにより、正確かつ迅速な検査作業が可能になる。こうした一連の作業の実現についてへプルマン氏は「Creoがエンジンの形状を知っていて、Windchillがレシピを持っていて、IoTプラットフォームの『ThingWorx』で各種情報を取得して、ARソリューションである『Vuforia』で検査作業に関するあらゆる情報をiPadを介して見えるようにしている」と説明する。
次にこれと近いケースとして、試作やパーツ製造で活用が進む付加製造(アディティブマニュファクチャリング)を例に挙げる。産業向けの金属3Dプリンタなどを使いこなすには、高い専門知識が必要で熟練者の経験やノウハウが造形品質を左右することもある。このことについてへプルマン氏は「その道のエキスパートは少人数であることが多い。そのために熟練者の作業内容を棚卸しして、経験の浅いエンジニアに展開(伝承)する必要がある。これをサポートするのが『Vuforia Expert Capture(旧:Waypoint)』だ」(へプルマン氏)。マイクロソフトのARヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)「HoloLens」を装着した熟練者の作業内容や手順などを画像や動画で記録し、データ化。それを基にメンテナンスマニュアルの自動作成や補足情報の追加などが行え、AR空間を活用した技術伝承や作業トレーニングに活用できる(関連記事:熟練作業者の技能伝承はARで、PTCが「Vuforia」の新製品を投入)。
ロックウェルとの協業を強化、“人の可能性を拡張する”ARソリューションで
続いて、へプルマン氏は工場のスマート化として、前回の「LiveWorx 2018」で発表したRockwell Automation(ロックウェル・オートメーション)との協業の拡大についても触れた(関連記事:「フィジカルとデジタルの融合」に「人」が加わり、IoTとARは真価を発揮する)。壇上にロックウェル・オートメーション 会長 兼 CEOのブレイク・モレット(Blake Moret)氏も登場し、「この1年、PTCとの協業に関する顧客の反応は非常に良いものだった。既に何十社もの受注を獲得している。最初の顧客はFord(フォード)だったが、われわれのテクノロジー(PTCのThingWorxとロックウェル・オートメーションの「FactoryTalk」)を組み合わせ、ソリューションとして提供した。また、ロックウェル・オートメーションの自社工場にも導入し、生産性向上につなげている」と、これまでの動きを振り返る。さらに、新たな展開として“人の可能性を広げる(拡張する)”という観点からPTCのARソリューション(Vuforia)を含めた両社の展開にも今後力を入れていくという。
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