ダイハツのDNGAはCASE対応を織り込む、足回りは乗り心地と操安を最優先に:車両デザイン(2/2 ページ)
ダイハツ工業は2019年6月6日、新世代のクルマづくり「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」に基づいて開発した新技術を発表した。「一括企画開発」によって、エンジンやCVT、足回り、アンダーボディー、シートを対象に、軽自動車から小型車までカバーすることを前提に設計思想を共通化した。また、電子プラットフォームを一新し、先進運転支援システム(ADAS)「スマートアシスト」の機能を拡充する。
操縦安定性と乗り心地を最優先した足回りに
DNGAで目指すダイハツ工業らしい基本性能については、「安全、安心、心地よいと感じられるクルマ」を目標とした。クラスを超えた安定感や乗り心地を、コストアップすることなく実現することが課題となった。今回、部門の垣根を超えて性能評価チームを結成し、これまではテストドライバーの感覚で作り込んでいた部分を客観的な指標を用いて検証した。
その指標の1つとなったのがドライバーの視覚だ。ドライバーの疲労感は、肉体的、精神的な負担に加えて、視覚の負担も要因となって生じる。運転中、クルマの揺れに合わせてドライバーの頭部が揺れた時、視線まで揺らさないために眼球の反射運動で視線のブレを相殺している。ダイハツ工業の研究で、眼球の反射運動で相殺しきれない視線のブレが、運転時の疲労につながっていることが分かった。視線のブレは即座に疲労に直結するわけではないが、時間がたつにつれて疲労として感じられるようになる。
こうした社内の研究成果もあって、DNGAでは肉体や精神の負担だけでなく、視覚的な負担の軽減も重視した。具体的には、軽量高剛性ボディーや体を包み込むようなクッション特性のシート、操縦安定性と乗り心地を最優先した足回りのジオメトリーによって実現している。
軽自動車ではこれまで、衝突安全性能の確保と室内空間の最大化が最優先されていた。これにより、足回りの最適設計が難しく、操縦安定性や乗り心地が犠牲になっている面もあった。DNGAでは、軽自動車の制約から離れ、A〜Bセグメントの小型車への搭載も前提にサスペンションのジオメトリーを新たに設計。クルマの挙動や路面からの入力、タイヤの動きの使い方などを最適にコントロールできるようにした。
DNGAの新技術を採用する新型タントで検証を行った結果、現行モデルや競合他社のモデルと比較して視線がブレる範囲が小さく、運転時間が長くなっても視線のブレを抑制できていることが分かった。新型タントはドライバーが感じた疲労についても、現行モデルや競合他社のモデルよりも少なかった。
「クルマの購入者には、疲れにくくなったかどうかを比較するのは難しいかもしれない。ただ、視線のブレは、クルマの動きに対して不安や頼りなさを感じる要因の1つである可能性もある。視線のブレを抑制したことによって、『軽自動車は不安、頼りない』といった印象が軽減されたと考えている。このことは、乗り始めや街乗りでも感じてもらえるはずだ」(ダイハツ工業の説明員)
後編では、足回りの最適設計を踏まえたボディーの進化、エンジンやCVTに採用した新技術を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「いいクルマになったが値段も高い」、原価低減へ広がるTNGA
トヨタ自動車は2018年8月3日に開催した決算会見で、“もっといいクルマづくり”のための構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の取り組みの現状を紹介した。 - 稼働から45年の京都工場をリフレッシュ、ダイハツが350億円投資
ダイハツ工業は2018年8月30日、同社京都工場(京都府大山崎町)のリフレッシュ工事を実施すると発表した。 - トヨタが新設する「新興国小型車カンパニー」、ダイハツに開発生産を一本化
トヨタ自動車とダイハツ工業は、今後の新興国向け小型車事業の強化に向けた両社の役割分担を決定した。2017年1月をめどに新設される「新興国小型車カンパニー」は、開発/調達/生産準備をダイハツ工業に一本化する。 - トヨタの完全子会社になったダイハツが中期計画、「DNGA」第1弾は軽自動車
ダイハツ工業は、2017〜2025年までの中長期経営シナリオ「D-Challenge 2025」を策定した。D-Challenge 2025では、ダイハツ工業版「TNGA」となる「DNGA」の実現を目指す。DNGAの第1弾車両は軽自動車を予定している。 - ダイハツ新型「ミライース」は車両重量650kg、軽量化は燃費ではなく走りに貢献
ダイハツ工業は、軽乗用車「ミラ イース」をフルモデルチェンジして発売した。ユーザーにとって燃費など経済性は「良くて当たり前」となり、走りや安心安全を重視する傾向に移っていることを踏まえて6年ぶりの全面改良を実施した。 - 新旧「ミライース」乗り比べ、走って見えてきたダイハツの取捨選択と企業努力
2017年5月に全面改良を受けたダイハツ工業の軽自動車「ミライース」。先代モデル比80kgの軽量化を果たし、安全装備や快適装備を充実させた。燃費が良いだけ、安いだけでは満足しなくなっているユーザーに対し、ダイハツ工業は新型ミライースでどのように応えていくのか。 - ダイハツ「スマートアシスト」がデンソー製ステレオカメラ採用、スズキに対抗へ
ダイハツ工業が衝突回避支援システム「スマートアシスト」の改良版となる「スマートアシストIII」にステレオカメラを採用する。これまではレーザーレーダーと単眼カメラの組み合わせだった。歩行者対応の自動ブレーキが実現するなど、性能向上を図っている。