IoTやAIの導入で感じる課題は? 情シス部門と業務部門の回答に大きな隔たり:製造ITニュース
JEITAがITプラットフォームの国内市場動向の調査結果について説明。今回は、1999年度から続けている情報システム部門向けの書面調査に加えて、2018年度から業務部門向けのオンライン調査を行ったことが初の試みとなる。
JEITA(電子情報技術産業協会)は2019年5月28日、東京都内で会見を開き、ITプラットフォームの国内市場動向とサーバの2018年度出荷実績について説明した。
これらのうちITプラットフォームの国内市場動向の調査では、1999年度から続けている情報システム部門向けの書面調査に加えて、2018年度から業務部門向けのオンライン調査を行ったことが初の試みとなる。「情報システム部門向けの書面調査は同じユーザーからの回答も多く、年次推移が把握できる。その一方で、導入したITを使う側である業務部門が、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)についてどのように考えているかを把握する必要もあると考え、今回から調査を始めることにした」(JEITA プラットフォーム企画専門委員会 委員長の三木和穂氏)という。
なお、情報システム部門向け書面調査は回答数が376件で、業種別の内訳では製造/建設が38%で最も多い。業務部門向けオンライン調査は回答数が275件で、業種別の内訳ではこちらも製造/建設が35%で最も多かった。
会見では、まず情報システム部門向け書面調査を基にした需要動向やIT化関連テーマの注目度の推移について紹介。IT投資スタンスと投資予算推移では、2018年度は2017年度より投資増の傾向にあり、2019年度も引き続き投資増の傾向が続く見込みとした。
また、IT化関連テーマでは、常に注目を集める「ネットワークセキュリティ」の他、「自然災害や事故に対するシステム強化対策」の注目度が高まっている。今回の調査からテーマに取り入れたRPA(ロボッティックプロセスオートメーション)は、初めてにもかかわらず高い関心が得られているという。
また、業務部門向けオンライン調査とも関わる「AI技術の活用」「ビッグデータの活用」「IoTの取り組み」は注目度が高く、取り組み件数とも年々伸びている。
今回の調査で興味深い結果になったのは、情報システム部門向け書面調査と業務部門向けオンライン調査の両方で行った、IoT/ビッグデータ/AIの活用でどのような課題を感じているかという設問に対する回答だ。両部門とも「費用対効果」を課題の1つに感じている点では共通している。その一方で、情報システム部門は「活用目的の明確化」を、業務部門は「データ収集・分析技術の確立」を重視していることが明らかになった。
つまり、より現場に近い業務部門は、導入したIoTやAIのプラットフォームでどうやってデータを集めて有意義な分析結果を得られるかを課題としているのに対し、情報システム部門はそもそもそのプラットフォームの活用目的が明確化されていないことこそが課題ではないかと考えており、両部門の意識には隔たりがある。三木氏は「トップダウンで部門独自にITプラットフォームを導入したのはいいものの、期待とは違って実際にはなかなか成果が出ないことも多い。導入後の保守運用を任されることも多い情報システム部門からすると『とにかくIoTやAIで何かやる』ではなく、まずは何のために導入するのか明確にすべきだろうと感じているのではないか」と述べている。
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