VWグループが欧州で車載電池の開発、生産を強化、欧州電池連合も発足:電気自動車
Volkswagen(VW)グループは2019年5月13日(現地時間)、電動車向けのバッテリー戦略を発表した。欧州での生産、研究開発においてさまざまな企業と連携する。コバルトを使わないバッテリーの開発も進めている。
Volkswagen(VW)グループは2019年5月13日(現地時間)、電動車向けのバッテリー戦略を発表した。欧州での生産、研究開発においてさまざまな企業と連携する。コバルトを使わないバッテリーの開発も進めている。
VWグループでは、今後10年間で70車種の電気自動車(EV)の新モデルを発売する予定だ。生産台数は2200万台に上る。グループ全体のバッテリー需要は、欧州とアジアで年間300GWh以上に拡大する見通しだ。現在はEVの需要が緩やかなため、アジアから欧州にバッテリーを輸入してきたが、現状のセル生産能力では市場のニーズを満たすには不十分だ。
欧州での現地生産は、今後の電動化戦略の中で重要な要素になるとしている。現在、欧州でSKIやLG化学、CATLが協力し、VWグループ向けの複数のバッテリー工場の操業が始まっている。
2019年5月13日のVWグループの監査役会では、欧州でのバッテリー生産体制の強化に向けた10億ユーロ(約1225億円)の投資が承認された。生産拠点の候補地はドイツのニーダーザクセン州だ。EEG(再生可能エネルギー法)の分担金免除や再生可能エネルギーの電力供給などの条件に応じて、2019年末までに具体的な投資を決定する。
今後、さらに巨額の投資を行う「ギガファクトリー」というバッテリーセル工場をパートナー企業と設ける。ドイツ国内を中心に候補地を選定中だ。また、全固体電池の生産拠点も欧州に設ける。全固体電池セルの生産では、QuantumScapeと提携している。
リチウムイオン電池の研究開発や生産における高度なノウハウは、VWグループのコアコンピタンスとして蓄積することを目指す。グループ内の全てのバッテリーセルの開発、調達、品質保証の機能は、ニーダーザクセン州ザルツギッターにある開発拠点センターオブエクセレンス(CoE)が統括する。CoEでは、2019年後半からVWグループによるバッテリーのパイロット生産が始まる。
さらに、バッテリーの研究は欧州全体でも協調して推進する。欧州電池連合(ヨーロピアンバッテリーユニオン)を設立し、2020年初頭から研究を始める。スウェーデンのバッテリーメーカーNorthvoltの主導の下で、原材料やセル、バッテリーのリサイクルまで研究テーマとして取り扱う。
材料に関しては、バッテリーの原料となるリチウムについてはGanfengと10年間の供給契約を結んだ。この契約だけで、リチウム需要の大部分をカバーするという。この他にもリチウムの調達先の交渉を進めている。コバルトの低減にも取り組む。コバルトの含有率は現在の12〜14%から今後3〜5年で5%に削減する。コバルトフリーのバッテリーセルの開発にも取り組んでいるという。
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