「部分最適」では逆効果――万全な品質コンプライアンスを構築するポイント:事例で学ぶ品質不正の課題と処方箋(2)(1/3 ページ)
相次ぐ品質不正から見える課題とその処方箋について、リスクコンサルタントの立場から事例を交えつつ解説する本連載。連載第2回目となる今回は、品質コンプライアンス対応で陥りやすい問題に焦点を当て、各企業において取るべき施策の検討材料を提供します。
はじめに――品質不正リスクに関わる「誤解」がもたらす混乱
相次ぐ品質不正を受けて、多くの企業で不正対策に関連する取り組みが進められているものの、手応えが得られているとの声はなかなか聞こえてきません。品質不正にかかるリスクは品質そのものの問題と品質コンプライアンスにおける問題(法令や契約の不順守)の二面があります。適切に区別、整理して対応しなければ、リスク対策が効果を発揮しないばかりか、かえって新たなリスクを生じさせてしまうおそれがあります。
今回は、品質コンプライアンスにおける問題に焦点を当て、各企業において取るべき施策の検討材料を提供します。品質そのものの問題については連載第5回にて取り上げます。
検討のポイント――順守対象のルールを踏まえ「全体最適」を目指す
コンプライアンス対応を進めるにあたっては、その対象となるルールを確認した上で、「全体最適」を目指していくことが鍵となります。
順守対象となるルールには海外法規制も含まれる
従前の品質不正事案が国内工場で発生しているため失念されがちですが、グローバルに事業展開を進めている企業では、日本はもちろんのこと不正の影響を被る各海外現地市場の法規制や取引先との取り決めに順守するよう対応が必要となります。
とりわけ米国における法令違反時の制裁は文字どおり日本とは桁違いです1)。違反時の制裁金や関連する集団訴訟(クラスアクション)の和解金として、数百億円〜1兆円超の支払いや、さらには関与した幹部など個人が禁固刑に処せられる恐れもあります。品質不正に関連する米国の主な法令は以下、図表1の通りです。
1)日本で品質不正に対して適用されうる主な法規制には、不正競争防止法(品質等誤認惹起行為)、産業標準化法 (JIS表示違反等)があります。違反時には、不正競争防止法では法人に対して3億円以下の罰金、産業標準化法では1億円以下の罰金が科されることとなっています。
法令 | 条文 | 対象とする行為 |
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Wire Fraud | 18 U.S.C. § 1343 | 電話、電子メール等の電子通信を使った詐欺 |
Entry of goods by means of false statements | 18 U.S.C. § 542 | 虚偽内容を含む説明により物品を輸入 |
False Claims Act2) | 31 U.S.C. § 3729〜3733 | 政府に対する不正、詐欺的な請求 |
2)同法令の詳細は、KPMG Insight Vol.25「米国子会社コンプライアンスリスク管理体制の再構築 - 『放任』からの脱却に向けて」を参照
リスクを発生可能性、発生時の影響で測る伝統的な手法によることを前提にすれば、これらの法令の見落としはリスク発生時の影響を過小評価することにつながるため、注意が必要となります。
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