PoCだけで終わっている現場へIoTの実導入を後押し、インフォシスとPTCが協業:製造ITニュース
インフォシス リミテッド 日本支店とPTCジャパンは、AIおよびAR技術を活用した次世代IoTソリューションで協業し、国内に向けたソリューション提供を開始する。
インフォシス リミテッド 日本支店とPTCジャパンは2019年5月15日、両社が保有するAI(人工知能)およびAR(拡張現実)技術を活用した次世代IoT(モノのインターネット)ソリューションの提供に関する協業を発表。日本国内に向けて、同日よりソリューション提供を開始する。今後3年間で50件以上のプロジェクトの獲得を目指す。
次世代IoTソリューションの提供で顧客環境のDX推進を支援
両社の協業は、IoTソリューション提供に関するエコシステムを強化するもの。製造業をはじめとする幅広い産業領域を対象に、グローバルでIoTサービスを提供するインフォシスの強みと、近年IoTおよびAR領域で存在感を強めるPTCのソリューションを融合させることで、顧客環境のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、製品品質の向上や業務改善などに貢献する。
今回の協業の経緯について、インフォシス リミテッド Senior Directorの尾崎俊作氏は「インフォシス日本支店では、2017年後半からIoTおよびAI活用を含めたDX領域へのチャレンジを視野に動き始めていた。PTCとはグローバルでより密な協業を進めてきたこともあり、日本でも同様に進めていこうと、2018年4月ごろからPTCジャパンとディスカッションを重ねてきた。日本でもIoTへの関心は高まっているが、まだPoC(Proof of Concept)から抜け出せていない現場、PoCで終わってしまう現場も多い。そういう現場を次のステージに引き上げ、実務での活用を視野に入れたIoTソリューションの展開をPTCジャパンとともに進めていく」と説明する。
一方、PTCジャパン イノベーションプラットフォーム事業部 事業部長の辻雅史氏は「PTCとして、IoTやARに関連した豊富なソリューションと、これまで培ってきた実績に基づくアイデアを提供していきたい考えだ。インフォシスはIoTに関するエンドツーエンドのサービスをグローバルで展開し、製造業をはじめ、さまざまな領域での知見を保持している。両社の強みを生かし、足りない部分を補いながら顧客環境のDXの推進を支援していきたい」と協業における両社の役割について述べる。
次世代IoTソリューションの構成
協業で掲げる次世代IoTソリューションの構成だが、具体的にはデータ収集の基盤となるIoTプラットフォームとしてPTCの「ThingWorx」を用い、有用な洞察や業務改善などにつながるエッセンスを抽出するデータ分析にインフォシスのナレッジ主導型AIプラットフォーム「Infosys Nia」を活用する。そして、得られた分析結果を基に、ThingWorxで作成したダッシュボードでレポーティング(見える化)をしたり、Infosys NiaのRPA(Robotic Process Automation)コンポーネントで自動化したり、PTCのARプラットフォーム「Vuforia Studio」を通じて、AR環境で直感的にアウトプットを活用したりといったことが可能となる。
ちなみに、インフォシスのInfosys Niaは、知識のベースとなる「ビッグデータ基盤」と、同社が長年培ってきた機械学習のロジックを集結した「AIプラットフォーム」に、業務プロセスの自動化を実現する「RPA」のコンポーネントを加えたAIプラットフォームである。インフォシス リミテッド Industry Principal/Infosys Digitalの桑添和浩氏は「PTCのThingWorxで収集したデータを、Infosys Niaで分析することで、効果的なインサイト(洞察)の提供、RPAやARといったさまざま形式でのアウトプット提供、収集からアウトプットまで一気通貫のソリューション提供が可能になる」と説明する。
製造業だけでなく、エネルギーや建設からの引き合いも
両社は今回の協業を通じて、「製造、自動車、ハイテク」「エネルギー」「建設」「小売、流通・物流、倉庫」「ヘルスケア」「スマートシティー」領域でのソリューション導入を狙う。「国内ではエネルギーや建設といった、かなり大掛かりな設備を抱えている業界からの引き合いが強い」(桑添氏)とし、現時点で2案件ほど、ソリューションの本格導入に向けた展開が進んでいるという。
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