ミリ波レーダーに「60年に1度のパラダイムシフト」、高周波アンテナで新構造:車載電子部品(2/2 ページ)
日本電産は2019年4月12日、滋賀技術開発センター(滋賀県愛知郡)で説明会を開き、次世代高周波アンテナ技術について発表した。プリント基板を用いる従来のパッチアンテナとは異なり、金型成形で製造した金属製の導波路を重ねて3次元で配置する。これにより導波路損失やアンテナ効率をパッチアンテナの性能から改善するとともに、性能安定性を高めることができるという。
1台2役のミリ波レーダー、超音波ソナーとの置き換え狙う
デュアルモードショートレンジレーダーは、車速に応じて周波数帯を自動で切り替える。低速時は解像度を優先して79GHz帯を、中〜高速時は検知距離を優先した77GHz帯を使用する。検知距離は、79GHz帯使用時が10cm〜20m、77GHz帯使用時は最小検知距離が50cm、最大検知距離が70〜90mとなる。
また、79GHz帯を使用している時は、超音波ソナーでの検知が難しい細いポールやクルマの周辺を横切ろうとする歩行者、クルマが進む方向に対して垂直でない斜めの壁などの検出も可能だとしている。これにより、駐車中に障害物の接近を知らせる警報や自動駐車といったアプリケーションで、超音波ソナーとの置き換えを狙う。
説明会に合わせて、デュアルモードショートレンジレーダーを使った開発中の自動駐車システムも披露した。市販モデルをベースにした実験車両で、車体の四隅にデュアルモードショートレンジレーダーを搭載。電動パワーステアリングは、自動操舵(そうだ)向けに日本電産グループで手掛ける高出力タイプに置き換えた。空きスペースの左右の車両がかなり寄っているため車幅ギリギリのスペースを、デュアルモードショートレンジレーダーで検知しながら自動駐車する様子を実演した。
デュアルモードショートレンジレーダーは、2021年の量産に向けて中国の自動車メーカーと商談中だという。2025年に近距離センサー市場のシェア10%以上を狙う方針だ。
ミリ波レーダーをフロントガラスに
インテグレーテッドセンサーフュージョンは、ルームミラーの裏からフロントガラスに装着する。従来のミリ波レーダーは、ガラスを通すと減衰して検知距離が短くなるため、ガラスへの装着には不向きだった。日本電産は、今回発表した高周波アンテナ技術によってミリ波レーダーのアンテナ効率を高め、ガラスを透過する時の減衰を改善することでガラス越しでも180m先まで検知できるようにした。
インテグレーテッドセンサーフュージョンに使用するミリ波レーダーの最大検知距離は、車両が180mで歩行者が50mとなる。最小検知距離は車両の先頭から50cm。時速0〜200kmの速度範囲で作動する。組み合わせるカメラは解像度が1820×940ピクセルで、画角が100度だ。ECUは1つのプロセッサでカメラとレーダーの情報を統合処理する。インテグレーテッドセンサーフュージョンにより、自動車アセスメントのEuro NCAPが2022年までに評価項目に入れる、自動ブレーキをはじめとする8つの機能を実現可能だとしている。
インテグレーテッドセンサーフュージョンは、すでに複数の自動車メーカーと商談を進めている。中国自動車メーカー2社が採用を決めており、2020年から量産を開始する。日系自動車メーカーにも、2023〜2024年の採用に向けて提案を進めている。「電気自動車は、車載充電器のレイアウトやデザイン性の追求などの理由から、ミリ波レーダーを置く場所がなくなっていく。フロントガラスに装着しても性能を確保できるのは競争力になる」(三重野氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 夜間の歩行者対応自動ブレーキ、「カローラスポーツ」「N-VAN」がJNCAP満点
国土交通省は2018年11月29日、「平成30年度前期自動車アセスメント」の評価結果を発表した。今回から新たに「対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間街灯あり)」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」が評価対象に加わった。この2つの新項目において、トヨタ自動車の「カローラスポーツ」は満点を獲得した。 - バレーパーキングで駐車場はもうかるか、「自分でやる方が早い」は超えられるか
日本自動車研究所(JARI)は2018年11月13日、東京都内で自動バレーパーキングの機能実証実験を実施した。 - 「Toyota Safety Sense」が2018年から第2世代に、自動ブレーキが進化
トヨタ自動車は、予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」に新機能を追加した第2世代版を2018年から導入する。使用するセンサーは単眼カメラとミリ波レーダーで、現在のToyota Safety Sense Pと同じ構成となる。センサーの性能向上により検知対象を拡大するとともに、ユニットを小型化して搭載性を向上する。 - 車載準ミリ波レーダーは欧州製から日本製へ、新型「カムリ」や「CX-5」が採用
デンソーが新たに開発した24GHz帯準ミリ波レーダーが、トヨタ自動車の新型「カムリ」に採用された。マツダの新型「CX-5」も古川AS製の24GHz帯準ミリ波レーダーを採用している。従来は欧州製が多かった市場だが、国内サプライヤーが相次いで参入している。 - ミリ波レーダーのさらなる低コスト化へ、CMOSプロセスの採用が活発に
日本テキサス・インスツルメンツは、76〜81GHz帯に向けたミリ波レーダー用ワンチップCMOS製品の新しいポートフォリオを発表した。車載、ファクトリーオートメーション、医療など幅広い市場に提案する。現在量産されているミリ波レーダー向けソリューションと比較して、最大3倍の精度のセンシング機能を実現するとしている。 - 2024年、自動運転のアセスメントはいかにあるべきか
自動運転車の自動車アセスメントの在り方とは――。東京都内で開催された「第3回2016NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」(2016年8月2〜3日)において、EuroNCAP Presidentのアンドレ・ジーク氏が登壇。ドイツ道路交通研究所(BASt)の立場から自動運転車の普及を前提とした2024年のアセスメントを提案した。