買収されたジェムアルトはタレスの7番目の事業部門「DIS」として生まれ変わる:組み込み開発ニュース
ジェムアルトは、仏Thales Group(タレス・グループ、以下タレス)によるジェムアルトの買収完了に関して説明を行った。
Gemalto(ジェムアルト)は2019年4月9日、5G(第5世代移動通信システム)導入に不可欠なセキュリティソリューションに関する説明会を開催。その冒頭、ジェムアルト モバイルサービス&IoT事業本部 本部長の蔦田剛士氏が、同年4月2日(フランス時間)にアナウンスのあった仏Thales Group(タレス・グループ、以下タレス)によるジェムアルトの買収完了に関して説明を行った。
タレスは、航空分野、宇宙分野、防衛分野、交通システム分野、セキュリティ分野における各種システムおよびサービスを展開するフランスの大手企業。特に、航空管制システムの世界マーケットシェアが60%を占め、世界トップクラスを誇るという。その他、人工衛星や鉄道の運行管理システムも全世界で提供しており、シンガポールや香港の鉄道および地下鉄で、タレスのシステムが採用されている。
7つ目の事業部門を創設、両社のセキュリティ部門を統合
今回の買収完了に伴い、タレスの7つ目の事業部門として「デジタルアイデンティティ&セキュリティ(DIS)」が創設され、ここにデジタルセキュリティを手掛けてきたジェムアルトと、タレスのセキュリティ部門(2000〜3000人)を統合。ジェムアルトのCEOであるPhilippe Vallée氏が同組織の指揮を執ることとなった。
「2017年12月にタレス側からの買収提案を受け入れることで合意し、その後、独禁法クリアランス取得のプロセスが進められた。だが、タレスのセキュリティ部門とジェムアルトのセキュリティ部門(HSM:Hardware Security Module)のシェアを合算すると80%をオーバーしてしまうため、特に欧州および米国で作業が難航した。2019年2〜3月に無事承認が下り、4月2日に買収完了に至った」(蔦田氏)。タレスのプレスリリースによると、買収に15カ月の期間と48億ユーロを投じたという。この買収により、タレスの売上高は190億ユーロ、自己資金による研究開発費は年間10億ユーロとなり、68カ国での従業員数は約8万人となった。
両社のセキュリティ部門がDISに集約されたことで、今後、デジタルセキュリティ分野のリーダーとしての大きなシナジー効果が期待される。タレスは、センサーによるデータ取得(生成)からリアルタイムでの意思決定支援に至るまでの一連のプロセスにおけるあらゆる技術を保有することになる。その中で、データに関する認証などでジェムアルトの技術を活用したり、両社の技術を組み合わせて利用したりすることが可能になる。
シナジー効果、新規ビジネス創出を支える技術基盤
両社のシナジー効果が発揮される方向性はいくつか考えられるが、「例えば、世界60%のシェアを誇るタレスの航空管制システムの技術やノウハウを活用した新たなビジネス創出として、ドローンのトラフィックマネジメントなどが考えられる」と蔦田氏は語る。こうした新しいビジネスを生み出す源泉となるのが高い技術力であり、トータル2万8000人(タレス側で2万5000人、ジェムアルト側で3000人)もの研究者、技術者を抱えるR&D部門が共通基盤として機能し、ビジネスを支える新しいテクノロジーを生み出し続けるという。
また、DISとして今後、モバイルネットワークキャリアや建機、エネルギー関連企業などの顧客を対象に、タレスが以前買収したAIを活用したデータ解析プラットフォーム「Guavus」の販売も強化していく。「Guavusは、米国や欧州、アジア地域での採用実績のある製品。テラバイトクラスの大容量データを高速に取り扱うことができ、業務の効率化やサービス向上などに活用できる。日本の顧客にもゴールデンウイーク明けくらいから順次案内していく」と蔦田氏は述べる。
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