検索
連載

JIS規格における「幾何公差」の取り扱いを把握する産機設計者が解説「公差計算・公差解析」(2)(2/2 ページ)

機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第2回はJIS規格を基に「幾何公差とは何か?」ついて掘り下げる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

サイズ、サイズ形体、標準指定演算子、特別指定演算子とは?

 まずは「JIS B0021」と「JIS B0420-1」で表記されている、「形体」と「サイズ形体」について説明します。

形体とサイズ形体
形体とサイズ形体

 形体とは“ありさま”を示すのみで、どのような数値で表される状態なのかは、示されません。一方、サイズ形体とは形体に“長さ”や“角度”といった定義付けを行うことで、形体を数値的に表します。

 以下、JISを参照してサイズ形体を示す2つの例を作成してみました。

円筒に関連するサイズ形体の例(JISを参考に作成)
円筒に関連するサイズ形体の例(JISを参考に作成)
相対する平行二平面に関連するサイズ形体の例(JISを参考に作成)
相対する平行二平面に関連するサイズ形体の例(JISを参考に作成)

 形体については、「JIS B0672-1:2002(ISO 14660-1:1999)製品」の「幾何特性仕様(GPS)−形体−第1部:一般用語及び定義JIS」に、以下のような定義が記載されています。

  • (幾何)形体[(geometrical) feature]:点、線または面
  • 外殻形体[(integral feature)]:表面または表面上の線
  • 誘導形体[(derived feature)]:1つ以上の外殻形体から導かれた中心点、中心線または中心面

 設計作業を行う際、設計者は形を具現化する必要があり、(あえて言うことではありませんが)大きさ寸法、角度寸法といったものが重要となります。

 「JIS B0672-1」では、(幾何)形体が、設計の分野(設計者による具現化)、加工の分野(実体)、検証の分野(計測装置による実体のサンプリングの使用)という3つの分野に存在しているとの記載(定義)があります。

 これら3つの分野において、“一義的な正しい解釈”が行われなければなりません。このJIS規格の中で「サイズ」という言葉が使用されました。これは、これまで普通に「寸法」と呼ばれていたものが、単に「サイズ」と呼ばれるようになっただけです。

 それではなぜ、「サイズ」と呼ぶようになったのでしょうか。その背景には、JISがGPSに対応したことが影響していると筆者は考えます。すなわち“サイズ=GPS”という概念です。「サイズ」について筆者なりに定義してみると、「サイズ形体を決めるための長さや角度の大きさ」です(あくまでも筆者の考え方であり、公式なものではありません)。

 次に「標準指定演算子(default specification operator)」「特別指定演算子(special specification operator)」ですが、「演算子」といわれても正直ピンときません。

 JISでは、次のように定義されています。

  • 標準指定演算子(default specification operator)
    • 標準指定演算だけの組み合わせで表記した演算子
    • 注記:標準指定演算子は、次のいずれかである
      • ISO規格で規定したISO標準指定演算子
      • JISで規定したJIS標準指定演算子
      • 社内の規格・文書で規定した社内標準指定演算子
      • 上記3つの演算子のうちの1つが図示された図示標準指定演算子
  • 特別指定演算子(special specification operator)
    • 1つ以上の特別演算を含む演算子

 やはり文章では難解なので、JIS規格を参考に2つの例を作成してみました。

サイズ形体が円筒形状 ISO標準指定演算子 サイズの基本的なGPS指定の例
サイズ形体が円筒形状 ISO標準指定演算子 サイズの基本的なGPS指定の例
サイズ形体が相対する平行2平面 ISO標準指定演算子 サイズの基本的なGPS指定の例
サイズ形体が相対する平行2平面 ISO標準指定演算子 サイズの基本的なGPS指定の例

 JIS製図を学んできた者としては、ごく普通の表記です。特別指定演算子ですが、次のように図面で表記できます。

許容差に基づいた特別演算子
許容差に基づいた特別演算子
JIS B0401-1
JIS B0401-1 ISOコード方式に基づいた特別演算子

 この例で使用した「GG」は、「ISO公差」といわれます。GGは「最小2乗サイズ(最小2乗当てはめ判定基準による)」であることを示します。詳しくは、ISO公差に触れる際に解説しますが、「SOLIDWORKS」ではあらかじめその記号が設定されています。

ISO公差(SOLIDWORKSより)
ISO公差(SOLIDWORKSより)

 このようにJIS規格はISO規格の影響を大きく受け、特にGPSを意識しています。次回は、GPSを意識する上での「サイズ公差」「幾何公差」について取り上げます。お楽しみに! (次回に続く


Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の代表リーダー・事務局も務める。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る