検索
ニュース

“人の手”と“タコ足”をリアルに再現するロボットハンド、イカロボもあるよハノーバーメッセ2019(1/2 ページ)

ドイツのFestoは、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、生体の動作を模倣して新たなロボットの将来像を描く教育プロジェクト「The Bionic Learning Network」の成果を披露。“人の手”や“タコの腕”、“イカの泳ぎ”を再現した技術群を紹介した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

≫ハノーバーメッセ2019特集はこちら

 ロボットなどが“人に似過ぎると気持ち悪い”という「不気味の谷」という現象が知られているが、もはやその領域に入っているかもしれない――。

 ドイツのFestoは、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、生体の動作を模倣して新たなロボットの将来像を描く教育プロジェクト「The Bionic Learning Network」の成果を披露。“人の手”や“タコの腕”、“イカの泳ぎ”を再現した技術群を紹介した。

 Festoでは「The Bionic Learning Network」という教育プロジェクトとして、生物の動きや生態を機械に取り入れる取り組みを推進。これまでも鳥やくらげ、ペンギンの動きに似せたロボットなどを開発してきた。これらはすぐに製品化するものではないが、このプロジェクトで開発された技術などの一部はFestoのロボット開発などに活用されているという。

 毎年ハノーバーメッセの会場でも「カメレオンの舌」※)や「トンボの羽」「タコの足」※)などを模したさまざまな技術が紹介されているが、今回は、新たに非常にリアルな人の手を表現した「BionicSoftHand」や、タコ足のような「BionicSoftArm」、イカの泳ぎのような動きを模した「BionicFinWave」を紹介した。

※)関連記事:リアル過ぎてキモい! タコ足を模したロボットハンド
※)関連記事:気持ち悪いけどすごい! “カメレオンの舌”でつかむロボットハンド

photo
イカの泳ぎのような動きを模した「BionicFinWave」(クリックで拡大)

“人の手”をリアルに再現した「BionicSoftHand」

 「BionicSoftHand」は空気圧を利用して動作させる軽量ロボットハンドである。人工知能による学習と組み合わせることで人が手で行う「つかむ」「抱える」「回転させる」「触れる」「タイピングする」「押す」などの日常生活における動作を再現させているという点が特徴である。

photo
人の手を模した「BionicSoftHand」(クリックで拡大)

 人間の手とは異なり「BionicSoftHand」には骨がない。指の中の空気圧でベローズ(蛇腹)構造を生かして、3Dの織物の構造体の動きを制御する。チャンバーが空気で満たされると、グリッパーの指が曲がる。空気室が空の場合、グリッパーの指は伸びたままとなる。親指と人差し指にはさらに回転モジュールが装備されている。これら2本のグリッパーフィンガーについては横方向に動かすことも可能である。これらの構造により「BionicSoftHand」は合計12の自由度を持つ。

 グリッパーフィンガーのベローズ構造は弾性繊維と高強度繊維を組み合わせて織られた織物カバーで覆われている。これにより構造体に加わる圧力などを正確に把握することが可能である。センサーは手のひら側に15個、手の甲側に10個設置しており、これで構造体の圧力を検知する。

 配管作業をできるだけ少なくするために、小型のデジタル制御バルブ端子を新たに設計した。バルブ制御を高精度化したことで、グリッパフィンガーを制御するための管をロボットアーム全体に通す必要性をなくし、供給空気用と排気用にそれぞれ1本のチューブで素早く簡単に接続して操作できるという。

AIの活用により、学習の成果を共有

 ロボットアームの動作は具体的な行動を模倣するのではなく、手に目標を与え、その学習をロボットアームが試行錯誤を行うことで達成できるようになるという。デモでは、12面の立方体を手の上で転がし、ある面が上に向くようにする動作が行われた。深度検知カメラのデータと人工知能によるアルゴリズムで最適な動作を行える。

「BionicSoftHand」のデモ。正12面体の指定の面が上を向くように、画像認識をして手のひらで転がして自律的に動作をする様子(クリックで動画再生)

 リアルの世界でのロボットによる制御データは全てデジタルデータとして記録されており、デジタルツインを作り出し、仮想空間上で並列学習によりトレーニングを加速させている。仮想空間でのシミュレーションで訓練された後、リアルな世界の「BionicSoftHand」に転送され、エッジコンピューティングにより最適なアルゴリズムで動作を行えるようになる。これらで得た学習の成果は知識構築ブロックとして保持し、スキルを共有できるようにしているという。

ハノーバーメッセ2019 Festoの「BionicSoftHand」デモの様子。人の手を画像センサーで認識してそのまねをする。どんな手の形状でもほぼ対応できる(クリックで拡大)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る