「デザイン思考でデジタル変革する」って何するの? 最初の一歩とは:イノベーションのレシピ(3/5 ページ)
IoTやAIなどの先進デジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデル変革を行う「デジタル変革」の動きが加速。この動きの入り口としてデジタル変革ワークショップなどの開催も広がっている。しかし、実際に「ワークショップが何になるのか」はまだまだ見えにくい。そこで、本稿ではこうした取り組みを進める富士通の「FUJITSU Digital Transformation Center」でのワークショップの内容を通じ、製造業の取り組みにどう役立つのかを紹介する。
工場でデータをどう活用すべきなのか
製造業ではスマート工場化への取り組みは盛り上がりを見せているが具体的な成果につながらないケースもまだまだ多い。工場についてのワークショップなどを担当する富士通 オファリング推進本部 AI&IoTオファリング統括部 オファリング企画部の川上裕介氏は「スマート工場化を進めてデータを取得できるようになっても『どういうデータが取れるのか』からスタートしたものは、実証でストップしその後に生かされていないケースも多く見られる。重要なのは『何がやりたいのか』という点だ。具体的にはKPI(重要業績評価指標)が明確化できていないというケースが多い」とスマート工場化の課題について語る。
そこで同ワークショップで推進しているのが「上下両方からのアプローチ」(川上氏)である。まず工場内のデータ活用で具体化したい価値を明確化し、その実現に必要なデータは何かを明確化する。そしてそれを取得するためのツールやセンサーなどを具体的に考えていくという流れである。「ありたい姿からバックキャスティングで考えていくのが重要だ。何を見たいかというところからスタートする。そのための支援を行うのがワークショップの狙いだ」と川上氏は述べている。
ワークショップは以下のような流れで進めているという。
- 事例紹介などインプットでイメージを膨らます
- ワークショップツールを使い、課題とKPIを洗い出す
- KPIなどを達成する仕組みのコンセプトメイキングを行う
- できたコンセプトに合わせてKPIをブラッシュアップする
- 具体的にどういう取り組みを行うのかラフスケッチを描く
- プロトタイプ作成
- アジャイル型でPDCAを回し本格実装につなげる
ユニークなのがワークショップツールである。川上氏は「意味のあるKPIを設定できるかが重要だ。そのためにDTCではさまざまなツールを用意している」と述べている。以下で実際にワークショップのイメージを見てみよう。
ユーザーと重視する課題を考える
まず、工場内のどういうユーザーがどういう課題を持っているのかというのを洗い出す作業がある。基本的にはツール内に主な課題となるような項目が用意されており、それをユーザーごとに分類していく。星マークでの重み付けなども可能だ。
ユーザーごとのKPIを考える
課題が明確化できれば、ユーザーごとに見たいデータやKPIなどを設定する。これもツール上で選択するだけで可能だ。
課題とKPIをマトリクスで確認する
設定した課題とKPIについては、それぞれの環境に応じてマトリクスで確認することが可能となる。
こうしてできたKPIを満たす「工場全体の最適化」のコンセプトを作り、プロトタイプ製作と実証へと進んでいくという流れである。川上氏は「同じ製造業でもKPIの設定やマトリクスの構造は大きく異なるケースも多い。ワークショップを通じて数多くの類型も蓄積できているので、近い類型からKPIの設定方法などを提案することも可能としていく」と述べている。
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