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AIとロボットの組み合わせは工場自動化に何をもたらし、何をもたらさないのかMONOist IoT Forum 大阪2019(中編)(3/3 ページ)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年1月22日、大阪市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。大阪での同セミナー開催は3度目となる。中編では特別講演のOKIデータ 生産統括本部 LED統括工場 生産技術部 第2チームチームリーダーの新井保明氏と、同社技術開発本部 要素技術センターチームリーダーの谷川兼一氏による講演「ロボットを用いたAI生産システム」の内容を紹介する。

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ロボットを活用したAI自動生産システムの成果

 これらによって得られた成果とはどういうものがあるのだろうか。1つの大きな成果として谷川氏が挙げるのが「予想もしなかった効率化が可能になった」という点である。

 「ある工程で作業待ちのワークを一時的に取り置ける置き場を5つ作ってあり、人間が作業する場合はここに5つのワークを置いていた。しかし、ロボットとAIに作業をやらせると、5つ埋めることはほとんどなかった。2個や3個の場合が多く、状況によって個数が変わるという状況が生まれていた。この理由は何かとメンバーで頭をひねっていたが、最終的に分かったのは、実は全工程の中では最終工程の検査工程がボトルネックになっていたということだった。最終の検査工程から逆算すれば、事前の工程では5個のワークを待機させる必要はない場合がほとんどで、AIとロボットはその判断を自律的に行っていたことが分かった」(谷川氏)

 これらの新たな効率化への知見に加えて、当初の目的通り生産技術者の工数なども10分の1以下に削減できたという。

ロボットの限界と人との協調によって生み出される価値

 ここまで見てきたように、ロボットとAIの活用で大きな成果を生み出してきたOKIデータだが、現在は「完全自動化」の限界についても感じ始めているという。

 「完全無人化を実現するために必死で取り組んできたが、やればやるほど、ロボットでは実現できないところが考えられないほど多く存在するということが分かってくる。コストや工数を数多くかければ実現は可能だが、現実的なビジネスとして採用できる領域は非常に限られている。そのため現在取り組んでいるのは、人と機械が協調する工場で、これらを全面的にAIが支援するというような仕組みだ」と谷川氏は語る。

 具体的にはAI部に「ディープQ学習」を採用し、人とロボットのそれぞれをアシストする仕組みを作る。現在仮想工場内でシミュレーションを進めているところだという。工場モデルとしては、工程数200、装置130台、人6人、行動400、ロット30のモデルを作り、理論検証を行った。

 さらに疑似モデルとして小規模のラインによる実証も進めている。学習前は各作業のスピードアップが主眼となり1人分の作業が余っているような状況が生まれていたが、学習により均等に作業を配分するような形で全体として早く作業を行えるような成果も出ているという。

 ただ「人と接する部分ではAIだけの問題だけではない課題が多く出ている。アシストはどのタイミングでどういう発信にすべきなのかという点や、インタフェースはどういうものが最適なのかという問題、作業者全員に指示すべきなのか管理者だけでよいのかなど、多くのことを考える必要がある。また人と接する以上、システム面だけでなくメンタル面での影響もあるので、それらに考慮した仕組み作りも必要だ。

 ただ、方向性として工場全体をAIで最適化していく方向性は変わっていないという。「理論実証では良い結果を得られつつあるので、次のフェーズに進めていく。2021年度までに人と走行ロボットによる最適支援を実現する。人アシストを先に実現し、ロボットからロボットへのアシストはその先に実現する。2025年度には工場間も全て結び、生産活動全体を一元化されたAIによる支援で最適化できるような世界を目指していく」と谷川氏は述べている。

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