工場設備の排熱実態調査報告書を公表、未利用熱の活用で省エネ化を促進:工場ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構と未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合は、15業種の工場設備の排熱実態調査報告書を公表した。この結果を基に、未利用熱の活用技術を産業分野へ適用させる方策を明らかにし、省エネ化を促進する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)は2019年3月4日、15業種の工場設備の排熱実態調査報告書を公表した。
NEDOとTherMATは、熱利用量の多い15業種に対し、未利用熱の排出や活用状況に関するアンケートを実施。全国1273事業所から得られた回答を分析し、報告書にまとめた。
報告書では、未利用熱の排出や活用に関する実態が業種別、温度帯別、設備別に明らかにされた。例えば、15業種の排ガス熱量の合計は743ペタ・ジュール/年(PJ/y)で、そのうち76%に相当する565PJ/yが200℃未満の排ガス熱量であることが分かった(ペタ・ジュールは1000兆ジュール。1ジュール≒0.239カロリー)。このことから、200℃未満の未利用熱を有効に活用する技術が開発されれば、国内の産業分野のエネルギー消費量を大きく削減できる可能性がある。
また、省エネルギーセンターが実施した工場群のエネルギーシステムに関する調査研究(2000年度)と比較したところ、2015年の15業種全体の排ガス熱量は2000年から約14%低下していた。
NEDOは今後、省エネルギー効果や環境への影響度、未利用熱活用技術の導入メリットや普及拡大させるための方策を明確にする。さらに、200℃未満を中心とする未利用熱を有効に活用する技術を開発し、産業分野へ普及させるなどして、省エネ化を進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オムロン逆転の発想、「カイゼン」と「省エネ」は同じことだった
生産のQCD(品質、コスト、納期)を見直すカイゼン活動は、現場力の見せ所だ。一方、省エネはこれまで現場から離れた工場の管理部門の役割だとされてきた。QCDと省エネを同じ目線で捉えると何ができるのだろうか。オムロンの事例を小寺信良が紹介する。 - 中国排出権取引、省エネ工場の日本企業は排出権ビジネスの勝者なのか――PwC
PwC Japanは「海外サステナビリティの最新動向と日本企業の課題」をテーマに、米国や中国の事例などを紹介し、戦略的に気候変動対策に取り組む価値について訴えた。 - 省エネすれば、品質が上がる!?――オムロンと三菱電機がエコ工場技術を提案
「工場の省エネはやり尽くした」との声もあるが、現場のプロセス全体を見たとき、まだまだ“見えない無駄”は残されている。DMS2013では、オムロンと三菱電機が管理技術による工場の“見える化”を進めて省エネを図る、エコファクトリ―技術を出展し、省エネと、工場の性能向上を両立する技術として注目を集めた。 - 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。 - 自律するスマート工場実現に向け、IoTプラットフォーム連携が加速へ
製造業のIoT活用はスマート工場実現に向けた取り組みが活発化している。多くの企業が「見える化」には取り組むが、その先に進むために必要なIoT基盤などではさまざまなサービスが乱立しており、迷うケースも多い。ただ、これらのプラットフォームは今後、連携が進む見込みだ。 - 見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。