仮想化しても車両制御向けのリアルタイム性を確保、ハードウェアで処理時間短縮:車載半導体(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2019年2月19日、28nmプロセスを採用した次世代車載制御用マイコンに仮想化支援機構を搭載したテストチップを開発し、最大600MHzでの動作を確認したと発表した。自動車メーカーがECU(電子制御ユニット)の機能統合を進めており、1つのマイコンにより多くの機能を搭載することが求められている。テストチップには、これに対応するための技術を搭載した。
復帰時間で自己故障診断
ASIL Dを満たす機能安全を実現するには、動作中のマイコンに対する自己故障診断が必要になる。今回、ルネサスはCPUの処理時間に影響を与えずに自己故障診断を実現するため、CPUのスタンバイ状態から復帰する期間に故障診断を実行する「スタンバイーレジューム自己故障診断機能(SR-BIST)」を開発した。電源がオンの状態でCPUが実行とスタンバイ状態を繰り返すユースケースにおいて、チップがスタンバイ状態から復帰するたびに、CPU動作前に故障診断を実行できる。
従来は、スタンバイ状態から復帰するまでの期間は外部クロックの発振が安定しておらず、電流変動に制限があった。そのまま故障診断動作を行うと、電流変動率が増大し、電源の許容範囲を超えてしまう。ルネサスは、外部クロックよりも立ち上がりの早いオンチップオシレーターの診断クロックを故障診断に使用することで、電流変動率を抑えながら自己故障診断を実現した。オンチップオシレーターからのクロックの周波数をN/M分周器で段階的に増加させることにより、電流変動率の増加を従来の6分の1に抑えてSR-BISTを実行できるようにした。
5Vトランジスタでギガビットイーサネット
テストチップには通信インタフェースとして、電気的ノイズ耐性に優れたSGMII(Serial Gigabit Media Independent Interface)規格に対応したギガビットイーサネットを搭載している。5Vのトランジスタを使用した点が特徴となる。
民生用機器などの電子回路の電圧は3.3Vであることが多いが、車載用マイコンのインタフェース回路はサージ電圧に対する信頼性を確保するため5Vのトランジスタが使用されている。車載用マイコンでは今後も引き続き5Vのトランジスタが使用されるため、これに対応したギガビットイーサネットのインタフェースを開発した。5Vのトランジスタを使用した場合、信号帯域が悪化するのが課題だったが、送受信にそれぞれ専用回路を追加することで、SGMII規格に準拠する信号品質を実現した。
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