デジタルツインを「モノづくり」と「コトづくり」に生かす:事例で学ぶデジタルツイン(3)(2/2 ページ)
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第3回は、生産やサービスの局面におけるデジタルツインについて説明する。
サービスのデジタルツインで重要になる製品構成管理
次に、サービスにおけるデジタルツインの活用について、乗用車の車両メンテナンスを例にとって見てみます。
自動車のエンジンルームのメンテナンスサービスでは、サービスマンに以下の項目の情報がスムーズに提供されることが理想です。
- その車両独自の情報
- 点検や修理の方法に関する情報へのアクセス
- その情報はWebベースで利用でき、動的にコンテンツ生成される
もう一段踏み込んで考えると、まず設計側のデジタルツインにワイヤハーネス情報、つまり結線情報と、3Dの配索情報が存在し、かつ生産時に車両識別番号(VIN)にもとづいて記録された構成情報が利用可能であるべきです(図5)。
車両一台一台ごとの管理は号機管理とも呼ばれますが、この情報が設計側の製品データ管理と連携していないケースも少なくありません。つまり、デジタルツインとして設計と生産が切れてしまっている状態です。
最近の乗用車はオプション品が多彩なため、構成の種類数だけで考えると膨大になり、それらを1対1で設計のデジタルツインとして定義することは不可能です。つまりここでは、BOMにとどまらない、3Dや結線情報を視野に入れた製品構成管理が求められることになります。
双方が管理されていてかつ連携のあるデジタルツインが存在すれば、車両識別番号から固有の車両構成情報が判別されるため、その車両固有のワイヤハーネス(結線、3D配索)情報がサービス現場に提供できます(図6)。
本連載では3回にわたって、デジタルツインのもたらす価値を、設計、生産準備、生産現場・サービスという観点で概観してまいりました。近年、デジタルツインによって業務を革新するための技術要素がそろってきたとはいえ、それを生かすためのシステムを準備したり稼働したりしているところは多くありません。本連載による解説が、そのような皆さまの課題解決の一助となれば幸甚です。3回にわたりお付き合いいただきありがとうございました。
(連載完)
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