都市部への人口集中、観光客の増加……今こそ新しいモビリティの創造を!:和田憲一郎の電動化新時代!(31)(3/4 ページ)
中国が建設を進める新しい都市「雄安新区」を2018年末に訪問した際、このプロジェクトは「国家千年の大計」と聞いた。千年といえば、日本にも千年続くことを計画して作られた都がある。平安京そして現在の京都である。平安京は、794年に遷都以来、その後京都として現在で1225年になる。今回は、千年の大計と呼ばれる中国の雄安新区、そして日本の平安京(京都)における街づくりの在り方から、2019年の初頭の話題として、将来のモビリティ像について考えてみたい。
人口変化と都市化
過去と現在を見比べた場合、どうしても考慮しなければならない条件がある。人口変化と都市への人口集中である。例えば、平安京設立後の人口は約20万人と推定されているが、現在の京都市の人口は約150万人だ。また京都市を訪れ宿泊する観光客は、2017年の統計で国内外から約1600万人となっている。
さらに、現在の大きな課題の1つは、人口が都市に集中し始めていることである。「国連世界都市化予測(2018年版)」によれば、1950年には世界人口の30%が都市に住んでいたが、2018年には55%へと急増している。さらに2050年には68%の人が都市に住むと予測されている。
日本でも地方の多くは都市化に伴ってシャッター街が増え、逆に大都市へはどんどん人が流入してきている。しかし、このような現象はどう考えても困ったことが生じる。人々が都市に集まるのはよいが、家にじっとしている訳はなく、あちこち移動するだろう。まさに、歴史に例を見ない大量移動時代の到来である。東京、名古屋、大阪などの大都市は、現在でも自動車、バスに加え、鉄道、地下鉄も充実しているが、都市化によりさらに人口が増加すると、果たしてこのままで十分だろうか。
新たなモビリティの必要性
現在のモビリティには、一度に運べる人数に限度がある。自転車であれば1人か幼児を載せて2〜3人、乗用車は通常で1〜8人程度、大型ワゴン車でも10〜14人、大型バスは最大53人である。鉄道の場合はかなり多く、JR東日本によれば、山手線の車両は11両編成で、内回り・外回りともそれぞれ1時間に23本運行しており、輸送量は1時間あたり各6万人とのこと。つまり1本あたり約2600人運んでいることになる。
また、移動の多様化と増量の解決にはいろいろな方法がある。鉄道を例にとれば、延伸や本数を増やすなどである。バスも同様で、福岡市などでは市民生活に対応すべく数多くのバス路線が設定されている。また、話題の新技術といえば、ドローンを使った空飛ぶ自動車なども考えられるが、空飛ぶ自動車となると、飛べる人数や場所が限定されており、大量輸送には向かない。
2018年に数多くの実証試験を行っていた自動運転車に関しても、自由にどこにでも行けるというメリットはあるものの、一度に運べる人数は少ない。もし東京に500万台の自動運転車があると想定すると、歩行者、自転車などが混在するエリアでは、自動運転車で迅速に動くことは難しいのではないだろうか。
このような環境変化を考えるとき、尺度を少し長期化して、本来、日本の都市においてはどのようなモビリティが望ましいかを考えることも一案だろう。筆者は、将来どのようなモビリティが必要かと考えた時、移動できる人のボリュームを考えると、自動運転車や自動運転バス以外に、鉄道との中間を埋めるモビリティが望ましいのではないかと考えている。もちろん、都市計画や都市交通と連動していることは必須であり、既に何か計画されている場合や、路面電車などが張り巡らされた都市では必要ないかもしれない。
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