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百花繚乱のLPWAネットワーク、製造業は使いこなせるのかMONOist 2019年展望(1/2 ページ)

IoTをつなげるのに最適な、低消費電力かつ広域で利用できるLPWAネットワーク。無線局免許が必要なライセンス系、不要なアンライセンス系を含めて多くのサービスがあり、百花繚乱の様相を呈している。このLPWAネットワークを、製造業は使いこなせるのだろうか。

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 IoT(モノのインターネット)という枠組みは、モノがインターネットにつながることによって初めて実現できる。ということは、モノをインターネットにつなげるための通信技術が必須になる。もちろん、人よりもはるかに多くの数が存在するモノを有線の通信技術でつなげることは難しいので、おのずと無線通信技術が求められることになる。

 しかし、PCやスマートフォンなどで広く利用されるようになった携帯電話通信やWi-Fiは、多くの場合で処理能力や電力供給に制限があるモノに適した無線通信技術とはいいがたい。そこで、IoT向けに検討されているのがLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク(以下、LPWA)だ。

 LPWAは、その名の通り、ボタン電池による電力供給でも年単位の動作が可能な低消費電力性能と、km単位の広域で通信が可能なことを特徴としている。一方、そのトレードオフとして通信速度は速いとはいえない。ただしこれは、IoTの末端デバイスとなるセンサーノードが、1回の通信で送信するデータの容量が少ないことが多いというニーズと合致する。常時通信するのではなく、通信回数が1時間に1回、1日に数回と少ないことも一般的だ。

2018年は3キャリアの「LTE-M」サービスが出そろう

 技術の積み重ねによって技術的に一本化されている携帯電話通信やWi-Fiとは異なり、これから普及が進む草創期にあるLPWAは多くの選択肢がある。

 LPWAはまず、携帯電話通信事業者のように無線局免許が必要な周波数帯を扱うライセンス系と、900MHzや2.4GHz帯といった無線局免許が不要な周波数帯が対象となるアンライセンス系に分けられる。

主なLPWAの位置付け
主なLPWAの位置付け。無線局免許が必要なライセンス系と、無線局免許が不要なアンライセンス系に分かれる(クリックで拡大) 出典:平成29年版情報白書

 ライセンス系はセルラーLPWAとも呼ばれ、携帯電話通信規格を策定する団体である3GPPが規格化を進めている。現在各国で広く利用されているLTEの派生形として、「LTE Cat.1」や「LTE Cat.M1」「NB-IoT」などがあり、国内通信キャリアも取り組みを進めている。2018年におけるセルラーLPWAのトピックは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内3キャリアが、「LTE-M」という名称でLTE Cat.M1※)のサービスを開始したことだろう。

※)関連記事:「NB-IoT」を補完する「LTE Cat.M1」はカーシェアに最適?

セルラーLPWAの仕様比較
セルラーLPWAの仕様比較(クリックで拡大) 出典:ソラコム

 LTE Cat.M1は、通信速度が下り0.8Mbps、上り1Mbpsと、kbpsクラス以下の通信速度が一般的なLPWAとしては比較的高速である。KDDIと、KDDIのネットワークを用いるソラコム、ソフトバンクはこの仕様でサービスを提供しているが、NTTドコモは消費電力を抑えやすい半二重通信方式を採用しているため、下り300kbps、上り375kbpsとなっている。

 LTE Cat.M1よりも低消費電力となるNB-IoT※)については、ソフトバンクがLTE-Mと同時となる2018年4月にサービス開始をアナウンスしている。NB-IoTの通信速度は下り27kbps、上り63kbpsだが、一般的なIoTの用途であれば十分な通信速度といえるだろう。

※)関連記事:SIGFOXやLoRaに完全競合する“NB-IoT”こと「LTE Cat.NB1」

 NB-IoTで先行したソフトバンクに対して、NTTドコモとKDDIも取り組みを進めているものの、現時点でサービス開始時期は明確にはしていない。現状では、サービス提供を始めたLTE-Mの需要動向を見据えつつ、NB-IoTの投入時期を定めることになりそうだ。

 ただし、セルラーLPWAの本命は、次世代携帯電話通信規格の5Gだという声も強い。LTEよりも高速になるイメージの強い5Gだが、遅延時間の短さ、基地局当たりの接続機器数の多さ、高速移動体との通信能力など、IoTを強く意識して仕様が策定された※)

※)関連記事:5GはたくさんつながるからIoT時代に求められる、中国は5兆円投資でIoT先進国に

5Gと4Gの違い
5Gと4Gの違い。IoTを強く意識して仕様が策定された(クリックで拡大) 出典:IHS Markit Technology

 そしてその5Gは、米国では固定無線アクセス向けではあるものの2018年10月に既に商用サービスが始まっている。2019年上期にはスマートフォンなどのモバイルブロードバンド向けのサービスも始まる予定だ。日本国内でも、2019年9月のラグビーワールドカップに合わせてパイロットサービスを開始し、2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックから本格化する見通しだ。

 ただし、スマートフォンよりもはるかに通信量が少ないIoTの場合、通信コストもできるだけ抑えたい。そういった意味で、普及期の5GはIoTに最適とはいいがたい。このため、2025年ごろまでは、セルラーLPWAとしてはまずLTE-MとNB-IoTの利用が広がっていくコトになるだろう。そして、5Gが通信インフラとして当たり前になる2025年以降に、LTE-MやNB-IoTから5Gへの移行が進むかもしれない。

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