デジタルツインによる生産準備「バーチャルコミッション」とは:事例で学ぶデジタルツイン(2)(3/3 ページ)
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第2回は、生産準備工程におけるデジタルツインに着目する。
生産ライン/工場レベルのバーチャルコミッション
生産ライン/工場レベルのバーチャルコミッションにおいて、部品/製品搬送のロジスティクスと、プラントの作業区の間におけるマテリアルフローの相互依存性は大きな関わりを持ちます。現段階で仮想コミッショニングの主な目的は、プラント全体の効率を合理化することにあります。具体的には以下の項目が挙げられます。
- 作業区間の相互依存性の検出と最適化
- マテリアルフローを最適化する
- 信頼性の高いシミュレーション技術を使用して、生産システム、搬送システム、ロジスティックパラメータ、バッファーの最適化パラメータを決定する
- 顧客の要求やプロセスの変化に適応できる高い柔軟性
生産ライン/工場レベルのバーチャルコミッションの事例として、自動車のマフラーを手掛けるEisenmann(アイゼンマン)があります。
Eisenmanは、塗装工場、組立ラインに部品を搬送するオーバーヘッドモノレールシステム、自動誘導車両システムなどのさまざまな生産ラインについてバーチャルコミッションを実施しました。これらのシミュレーションの一般的な入力パラメータには、3D形状/位置などのプラントのレイアウト、速度や加速度などの技術的パラメータ要求されたスループット、シフトパターン、ラインやロボット修理の平均時間および稼働率などの工場内物流パラメータです。
バーチャルコミッションを完了し、操業を開始してから数年の後に、生産ラインを再構築することがあります。生産ラインが工場に設置されたときに作成されたシミュレーションモデルは、顧客のエンジニアがライン変更の影響を文書化/視覚化するのに役立ちます。
Eisenmannがバーチャルコミッションのためにモデルを構築したとき、それは顧客への成果物の一部となりました。顧客の多くがバーチャルコミッションのためのソフトウェアを使用していることもあり、顧客のエンジニアはシミュレーションを実行して必要なパラメータを変更することができます。この作業は、同じラインの設計中にバーチャルコミッションを実践しているサプライヤーからの生産ラインの仮想モデルを取得すると、さらに効率的になります。
今回は、生産準備工程におけるデジタルツインの活用について、バーチャルコミッションを中心に生産の複数のレイヤーにわたって述べました。次回は、生産とサービスの局面におけるデジタルツインについて説明します。
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