V2Xはいかにあるべきか、トヨタは北米もDSRC、5GAAはセルラーの優位性を強調:車載情報機器(3/3 ページ)
高度な自動運転の実現や、センサーでは認知しきれない範囲の危険を回避するため、V2Xの重要度が増している。しかし、自動車業界は携帯電話の通信網を使うか、境域通信を用いるかで2つに分かれている。各社の最新の取り組みをまとめた。
トヨタは手のひらを返さない
DSRCはC-V2Xに随分と押されているように見える。DSRCの支持派だったフォードは、2018年2月のMWC 2018のカンファレンスで「セルラーを支持していくことを決定した。方針転換はかなり難しかったが、全てのクルマがセルラーにつながるのは時間の問題であり、であれば、既にあるネットワークを活用するのが最善だとの判断に至った」と、5GAA加盟の経緯を語っていたという(※2)。先述した通り、フォードはC-V2Xの実証実験を積極的に実施している。
(※2)関連記事:自動車業界が5Gに手のひらを返した「MWC 2018」、そしてDSRCとの選択が迫られる
しかし、DSRCを使ったV2Xに長年取り組んできたトヨタ自動車は一貫した方針をとる。2018年4月、同社は米国で2021年に周波数5.9GHzのDSRCによる車車間、路車間通信に対応した車両を導入すると発表(※3)。そのプレスリリースでは「全ての自動車メーカーが米国でDSRCを採用するべきだ」と呼びかけた。
DSRC対応車を米国にも導入する計画を踏まえ、2018年8月にはミシガン大学の交通研究所とのパートナーシップを通じて、DSRCによるV2Xの研究を強化すると発表した(※4)。世界最大級のコネクテッドカーテスト環境であり、市内全域で運用されているAnn Arbor Connected Vehicle Test Environment(AACVTE)を活用する。
(※3)DSRC対応車導入のプレスリリース(※4)開発強化に関するプレスリリース
トヨタ自動車がV2XにDSRCを一貫して採用する背景には、ITSのインフラは変わらないことが重要であり、一度作ったインフラを長く使うべきだという考えがある。AACVTEは約3000万ドル(約33億円)を投じてDSRCのインフラも整備されている。2015年からの日本での運用実績があることも、米国へのDSRC導入を後押ししているだろう。
V2Xがドライバーや交通弱者に提供する安全面での価値を考えると、「このクルマは対応しているが、あのクルマは対応していない」というように分かれてしまうのは望ましくない。C-V2XとDSRC、どちらかに一本化するのか、システムを複雑化させずに共存、併用することができるのか、注目だ。
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