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光ディスクに強いパナソニック、秘訣は「三位一体と設備内製化」メイドインジャパンの現場力(22)(2/4 ページ)

パナソニックは2018年11月30日、報道陣向けに光ディスクなどを生産する津山工場(岡山県津山市)を公開。記録メディア市場で高いシェアを誇る同社技術力の源泉を、工場見学で見ることができた。

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技術力の秘訣は“設備の内製化”、マネできない技術を生み出す


パナソニックの大野裕之氏

 続いて、津山工場 工場長の大野裕之氏が同工場の概要を紹介した。1979年から操業を開始した津山工場は、敷地面積13万m2、建物面積6.3万m2の大規模な拠点で、これまでVHSテープからDVCテープ、RAMディスクなどを開発、生産してきた。

 同工場の最大の特徴は、光ディスクについて、製造部門だけでなく、開発と生産技術部門も一所に集めた“三位一体のモノづくり”が行えることだ。新製品開発が同工場内で完結するだけでなく、原材料の改良から製品生産を担う加工設備の内製化まで取り組み、他社が容易に到達することができない生産技術のブラックボックス化を進めている。


津山工場の概要(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 Archival Discを含む光ディスクの生産には、高精度な微細構造形成技術が欠かせない。津山工場では、ディスク基板の成形から多層膜形成といった基幹工程をインラインでつなぐ一貫生産設備を内製している。この生産設備をフルに活用したパナソニックは、Blu-ray Disc発売当初から2層式メディアを生産した業界唯一(同社調べ)の存在だったとして、設備内製化の恩恵を製品競争力の向上に生かすことができた。

左:津山工場の特徴と強み 右:Archival Disc生産の一貫生産設備(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 また、製品の品質検査体制にも自信を見せる。津山工場におけるArchival Disc生産では、ディスク1枚ごとに固有IDが割り振られ、この固有IDにひもづく形で全工程の生産データ、検査データがサーバに保存される。生産後にデータを確認したい場合は、該当ディスクをドライブで固有IDを読み込むだけで検査データが確認できるトレーサビリティーシステムを構築した。大野氏が「このシステムを運用できるのはパナソニックだけ」と胸を張る品質管理体制だ。

 さらに、同システムで収集した膨大な検査データを解析し、品質保証や生産歩留まりの改善に役立てる計画もある。製品の欠陥有無を確認するため生産工程中に多数撮影する画像データと設備の運転パラメータを活用し、ディープラーニングによる製造条件の安定化などを実施する予定だ。これら生産設備の歩留まり改善や、生産ラインの増設、ディスク容量の向上などの各種施策を含め、同工場では2023年までにArchival Discの生産能力を記録容量基準で2018年度比8倍まで増加させる方針だ。

 このように高い技術力を有する津山工場だが、その個別技術をパナソニック全社に水平展開し、同社の競争力向上に貢献している。


津山工場の提案活動は社内外より高く評価されている(クリックで拡大) 出典:パナソニック

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