光ディスクに強いパナソニック、秘訣は「三位一体と設備内製化」:メイドインジャパンの現場力(22)(1/4 ページ)
パナソニックは2018年11月30日、報道陣向けに光ディスクなどを生産する津山工場(岡山県津山市)を公開。記録メディア市場で高いシェアを誇る同社技術力の源泉を、工場見学で見ることができた。
HDD(ハードディスクドライブ)や磁気テープに代わる新時代のデータアーカイブ用ストレージとして期待される「Archival Disc(アーカイバル・ディスク)」。Archival Discはパナソニックとソニーが共同開発した大容量光ディスク規格で、2014年3月から容量300GB(ギガバイト)の第1世代製品が販売されている。
今後もよりいっそうの大容量化と高速化を予定している同規格だが、その実現にはパナソニックが古くから培ってきた記録メディア開発の経験が生かされている。同社は2018年11月30日、報道陣向けにArchival Discをはじめ光ディスクなどを生産する津山工場(岡山県津山市)を公開。記録メディア市場で高いシェアを誇る同社の技術力を説明するとともに、津山工場のArchival Discの生産ラインを披露した。
高まるコールドアーカイブのニーズ、Archival Discの採用も進む
工場見学に先んじて、Archival Discを含む同社の記録メディアビジネスの概要や、津山工場で行われているモノづくりの特徴について紹介が行われた。
津山工場は、パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社 ストレージ事業開発センターに所属する全7カ所の事業拠点の内、Archival DiscやBlu-ray Discを含む光ディスク本体、そしてArchival Discを活用しペタバイトオーダーの記憶容量を実現したデータアーカイブシステム「freeze-ray」などを生産するマザー工場だ。
Archival Discはライトワンス記録方式の光ディスクメディアであり、改ざんと誤消去の抑止、メディア寿命100年をうたう高信頼性、HDDと比較して電力消費が5分の1となる低消費電力が特徴。頻繁なデータアクセスは発生しないが長期間保存が必要となる、いわゆる「コールドデータ」を大容量かつ高速に保存できる。
現世代のArchival Discでは、容量50GBの記憶層を3層に重ねた片面ディスクを両面貼り合わせており、ディスク1枚の両面を合計した記憶容量は300GBを誇る。今後、符号干渉除去や多値記録、そしてさらなる超多層化技術の導入によって記憶容量の増加を目指すとしており、次世代となる500GBディスクは2019年初頭の市場化を予定する。また、次々世代の1TBディスクについても実用化の検討を進めている。
ストレージ事業開発センター所長の古川厚氏は、歴史的文献や芸術作品、AI(人工知能)活用が可能なデータ、監視カメラ映像や社会インフラ情報などの領域でコールドデータとしてアーカイブを行うニーズが急増していることを紹介。
Archival Discを組み込むfreeze-rayについては、既にFacebookや中国国有企業のデータセンターベンダーで相当数の導入が進んでいることを明かし、「2020〜2021年には、光ディスク、ハードディスク、テープなどのコールドストレージ市場が1兆円規模になると言われている。この市場でシェア10%の獲得を狙っていく」(古川氏)と事業目標を語った。
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