iPhone用リチウムイオン電池の技術動向変化を発表:組み込み開発ニュース
矢野経済研究所は、東洋システムと共同でiPhone用リチウムイオン二次電池(LiB)を解体分析した結果を発表した。iPhone 7用と比較して、iPhone 8用LiBではさらなる高エネルギー密度化が図られていた。
矢野経済研究所は2018年11月8日、iPhone用リチウムイオン二次電池(LiB)を解体分析して判明した、同電池の技術動向変化について発表した。同年2月〜9月に、東洋システムが同電池を解体・分析した調査結果を、矢野経済研究所がまとめたものだ。
まず、iPhone 6用LiB比で単位重量当たりのエネルギー密度を比較すると、iPhone 7用で105.2%、iPhone 8用で107.4%の増加が見られた。また、単位体積当たりでも113.5%、115.7%と増加していた。2016年に相次いだGalaxy Note 7の発火事故後もLiB高エネルギー密度化の傾向は継続していたという。
iPhone 8とGalaxy S8はほぼ同時期に発売されたが、それぞれのLiBエネルギー密度を比較すると、単位重量当たりで273Wh/kg対269Wh/kg、単位体積当たりで703Wh/L対659Wh/LといずれもiPhone 8用LiBの方が高かった。なお、iPhone 8用LiBの高エネルギー密度化は、正極の高密度化とLiB中の正極、負極の容量比であるA/C比の圧縮によるものであることが分かった。
さらに、iPhone 6、同7、同8用のLiBにおいて使用されている正極、負極、電解液、セパレータについて材料自体には違いが見られなかったという。正極合材密度については、iPhone 7用LiBで3.89g/cm-3、iPhone8用で3.96g/cm-3と、電極が高密度化していた。
LiBのA/C比は、iPhone 7用LiBで1.20、iPhone 8用では1.15となり、iPhone 8用LiBでA/C比の圧縮が確認された。A/C比1.20でも低い値といえるが、A/C比1.15とさらなる高エネルギー密度化が図られた背景として、矢野経済研究所では、均一な電極塗工が可能な高精度塗工機の導入など、電極作製プロセスにおける技術革新があったと推測している。
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