相撲取りの内臓を高品質に撮影できる超音波画像診断装置、肝硬変検査にも役立つ:医療機器ニュース
シーメンスヘルスケアは、超音波画像診断装置の新製品「ACUSON Sequoia(アキュソン セコイア)」を発表。これまで“ハイエンド”としてきた「ACUSON S3000」と比べてさらなる高機能化を図っており“プレミアムハイエンド”に位置付ける。
シーメンスヘルスケアは2018年10月26日、東京都内で会見を開き、超音波画像診断装置の新製品「ACUSON Sequoia(アキュソン セコイア)」を発表した。同日から販売を始める。これまで“ハイエンド”としてきた「ACUSON S3000」と比べてさらなる高機能化を図っており“プレミアムハイエンド”に位置付ける。
ACUSON Sequoiaの最大の特徴は、さまざまな要因で起こる超音波画像のばらつきを解決する新技術「BioAcoustic Technology」を採用したことだ。同技により、組織密度、硬度、減衰など、患者がそれぞれが持つ組織の特徴を捉えた、最適な超音波画像の撮影が可能になる。また、深部用のトランスデューサを用いることにより、最大で40cmの深部まで超音波画像を撮影できる。
会見には、ドイツ本社Siemens Healthineersにおける超音波画像診断事業のトップが来日し、超音波画像診断装置市場における日本の重要性を訴えた。同社 超音波画像診断事業責任者のロバート・トンプソン氏は「ACUSON Sequoiaは多様な患者の超音波画像撮影に対応できる製品であり、臨床で大きな力を発揮する。当社は品質の証明となる、日本市場での成功を望んでいる」と語る。また、同社 超音波画像診断事業 バイス・プレジデント プロダクトマーケティング&クリニカルマーケティングのデニス・マイスター氏も「超音波画像診断装置関連で多くの技術を発信し、その利用面でもリーダーといえる日本で発表できることはうれしい」と声をそろえる。
40cmの深さまで超音波画像を高い品質で撮影可能
超音波信号を送受信することで生成される超音波画像はばらつきが出やすく、診断の正確性に影響を与えることが課題だった。幼児から子供、大人、高齢者、そして男女の違いによって、脂肪や水分、筋肉量、体格が異なり、それらは超音波画像の画質に影響を与える。また、複数のフォーカス点をとったり、時間分解能を重視したりなど、撮影したい超音波画像の種類によってトレードオフも起こる。さらに超音波画像を撮影する施行者の技能にもばらつきがある。
ACUSON SequoiaのBioAcoustic Technologyでは、超音波信号の生成から送受信、画像形成の全てを見直した。従来品のACUSON S3000と比べて、送受信信号の波形の正確性で10倍、送受信信号の深部到達度で2倍、信号から画像形成までの感度で3倍の性能を実現。患者の特性や施行者の技能に左右されにくい、極めて高精細な画像をリアルタイムで安定して提供するとする。
特に、世界的に肥満が進む中で、肥満体形の患者の内蔵を超音波画像で検査するのにACUSON Sequoiaの高い深部感度と深部到達度の効果は大きい。従来は20cm程度の深さまでしか検査できなかったが、ACUSON Sequoiaは40cmの深さまで超音波画像を高い品質で撮影できる。その典型的な事例として、元大相撲力士の山本山(体重272kg)の超音波検査にも十分に対応できたことを挙げた。
また、肝線維化を評価する肝硬度計測に用いるせん断弾性波(シアウェーブ)について、ACUSON S3000と比べて6倍のエネルギー容量で発生させられるため、より正確な肝硬度計測が可能になるとする。ACUSON Sequoiaを先行評価した、JCHO 東京鎌田医療センター 顧問で東邦大学 名誉教授の住野泰清氏は「肝線維化が進んだ肝硬変などをびまん性肝疾患というが、その超音波診断はがんという病変部位を見つけるのではなく、肝臓全体の状態を見る必要がある。ACUSON Sequoiaのシアウェーブを用いた検査は極めて効果が大きい」と述べている。
関連記事
- AIを利用し、心臓異常をリアルタイムに検知する胎児心臓超音波スクリーニング
理化学研究所は、AI(人工知能)を活用して、胎児の心臓異常をリアルタイムに自動検知するシステムを開発した。超音波画像中に映る複数の物体の位置・分類を高精度で判別するAI技術「物体検知技術」を利用している。 - アルツハイマー型認知症に超音波治療の治験、根本的に治療できる可能性も
東北大学は、低出力パルス波超音波を用いたアルツハイマー型認知症の治療装置を開発し、治験を開始した。将来的に同治療法の有効性が認められれば、アルツハイマー型認知症を根本的に治療できる可能性を持つ、革新的な治療装置となり得る。 - 軽量・小型ながら高精細な画像を提供する超音波診断装置
コニカミノルタは、小型の高画質超音波診断装置「SONIMAGE MX1」「SNiBLEyb」を発売した。場所を選ばず使用でき、超音波の音響ノイズを抑制して伝達効率を上げる新技術「Dual Sonic」により、軽量・小型ながら高精細な画像が得られる。 - 部品メーカーの殻を破る、日本電波工業が超音波診断装置を開発
日本電波工業は、「MEDTEC Japan 2017」において、スマートフォンにつなげるだけで超音波画像を撮影できる「回路内蔵超音波プローブ」を展示した。 - 光超音波と超音波を組み合わせた3次元イメージングに成功
アドバンテストは、光超音波と超音波を組み合わせ、人の皮膚内部にある血管網を高分解能で3次元イメージングすることに成功した。これにより、血管が真皮のどの深さにあるかを精緻に特定できる。 - 超音波を360度の方向から照射、乳がん検診の高精度化と計測時間短縮に貢献
日立製作所は、簡便・無痛・高精度な乳がん検診を可能にする超音波計測技術を開発した。超音波を360度の方向から照射して自動スキャンを行うため、検査者の熟練度に依存せずに検査できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.