「何でも分かる」は強みか弱みか:DMM.makeの中の人に聞く「IoTとスキル」(3)
IoTを業務に活用したい人たちをサポートしている、DMM.make AKIBAのスタッフへのインタビュー。今回は、DMM.make AKIBAでテックスタッフとして活躍している日野圭氏
IoTを業務に活用したい人たちをサポートしている、DMM.make AKIBAのスタッフへのインタビュー。今回は、DMM.make AKIBAでテックスタッフとして活躍している日野圭氏。
>>前回:日本企業の多くがはまる、イノベーションのジレンマとは?
「全部できる人になりたい」
―― 現在の仕事の内容は。
日野 DMM.make AKIBAの施設運営と、主に電気系・クラウド技術がかかわる受託開発を担当しながら、IoTに関連する企業向けの人材育成研修の講師も務めています。開発からプロマネまで、今まで経験してきたことを踏襲しているような業務です。
―― モノづくりの世界を意識したのはいつ頃ですか。
日野 高校生の時ですね。子どもの頃はゲームが大好きで、ゲームクリエイターになりたいと思っていました。でも高校に入学する頃に、ゲームの世界はすごく忙しいうえに、ヒエラルキーがはっきりしているし、頂点に行くのは難しい。一般的な人がやる仕事ではないということに気付きました。高校は工業高校で、ロボコンなどにも取り組みました。やっているうちに動くものを作る面白さを知り、大学でもロボット、特にソフト側の研究をしました。他のことには目もくれず、工業高校から大学まで完全にPC漬けでしたね。
―― 当時自分のキャリアについて、どのように考えていましたか。
日野 大学に入る頃から、全部1人でできる人になりたいとと思っていました。ハードウェアを作ることができ、ファームウェアもその上のアプリも書けて、インターネットも分かってWebもできて……。一通りのことが全部できれば、仕事がなくなることはないだろうと考え、そういうキャリアを積んでいこうと計画していました。
―― 大学院修了後はNECに就職しましたね。
日野 はい。まずハードウェアに携わりたいと思って入りました。コンピュータ回路設計とFW設計の後、ワークステーションのOEM開発のPMを担当し、要件検討から保守まで、複数の企業とのハードウェアビジネスを経験することができました。それから、NECビッグローブのWebインフラ系の部署に異動し、Webのインフラやデータベースを担当しました。DMMに転職したのは、2016年です。それまでに全部経験できましたからおおむねプラン通りではありますが、3〜5年長くかかったかなと思っています。
でも、いつまでたっても「全部」にならない
―― 最近、全体を見渡せる人材の需要が高まっていると思います。日野さんのようなキャリアの方は貴重ですね。
日野 確かに最近は、IoTということで、技術分野をまたいだ、要件が定まっていない案件が多くなっています。それを具体的に落とし込んでいくために、分野間をつなぐ翻訳者としての役割を担うことが増えていますね。
ただ、何でも分かるというのは私の強みであると同時に、エンジニアとしては弱みでもあるんですよ。自分は全部分かろうと思って現在の状況になっているのですが、逆に「これ!」というスペシャリティがない。スペシャリティを持っている人に、憧れのようなものを感じながらやってきたのも正直なところです。DMMで働くことを選んだ理由の1つも、ここには私にはないものを持っている人がたくさんいるからです。
―― 現在の仕事をするモチベーションとなっているのは。
日野 私はもともとガジェットが大好きなのですが、何か面白いことを考えている人たちと出会える可能性があることですね。メイカーズムーブメントの頃と比べると、現在は少し落ち着いてきている感じがしますが、これからもオリジナリティーのあるものを作る人たちにたくさん会えればいいなと思っています。
―― 日野さん自身は、これからどういう立ち位置で仕事をしていこうと考えているのですか。
日野 昨今「フルスタックエンジニア」という言葉が流行ってきていますが、スペシャリストも翻訳者もどちらも必要だと思いますし、私は1つのことをコツコツやるのは向いていないので、フルスタック度合いを高めていくという方向かなと思っています。
ただどんどん新しい技術分野が出てくるし、技術分野同士とが関係することも多くなるし、翻訳者としてどこまでカバーすればいいのかと考えると、果てしないですね。「全部できたらいいな」という思いが今のキャリアの起点ですが、「全部」の範囲がどんどん広がっていくので、いつまでたっても全部にならない。勉強したいことが多すぎて息が切れそうですが、切らさずやっていきたいと思っています。
次回も日野氏のインタビューが続きます。(次回に続く)
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