プロトラブズ日本法人社長の今井氏、日本市場開拓を強化:CADニュース
プロトラブズは2018年10月16日、日本における事業戦略説明会を開催した。プロトラブズ本社のCEO ヴィッキー・ホルト氏は、同社のグローバルの財務実績と今後の事業戦略を明かした。2018年7月に同社日本法人の社長に就任した今井歩氏も登壇し、日本法人の今後の取り組みについて説明した。
プロトラブズは2018年10月16日、日本における事業戦略説明会を開催した。プロトラブズ本社のCEO ヴィッキー・ホルト氏は、同社のグローバルの財務実績と今後の事業戦略を明かした。2018年7月に同社日本法人の社長に就任した今井歩氏も登壇し、日本法人の今後の取り組みについて説明した。
プロトラブズは米国が本社の試作や小ロット生産に特化したオンライン部品加工メーカー。現在は、CNC切削加工、射出成形、3Dプリント(日本拠点は未対応)、板金加工の4サービスに対応する。
ホルト氏は「この1年間は売上高の伸びは堅調。安定した売上総利益率であり、50%半ばを維持していた」と話す。ホルト氏がCEOに就任した2012年以来、1億ドル近くをR&D関連に投資してきた。2018年10月発表時点では、過去12カ月の総売り上げが4億ドルで、同社の製造拠点は12、従業員数は世界で2400人、CNC加工機や3Dプリンタなど各拠点にある加工設備の総数は約1000台。年間かつグローバルなサービス利用者数は3万7000ユーザーで、データアップロード数は400万。
プロトラブズは2017年12月15日に板金加工とCNC切削加工を専門とする、カスタムパーツの受託製造を行うRAPIDの買収を発表し、同年末までに完了。以来、プロトラブズのサービスの一部として提供している(日本拠点は現時点未対応)。なお、この買収が今回の売上高総利益率(後述)などに影響しているとホルト氏は説明した。
同社における2018年第2四半期の財務では、前年同期比で34%増で、過去最高の1億970万ドルを達成した。同社のオンラインサービスを利用したユーザーの数は、前年同期比の18.7%増である1万9198人であった(RAPID買収によるユーザー増は含まず)。売上高総利益率は54%で、前年同期は56.5%であり若干下回った。営業費用は全売上高のうち33.6%で、前年同期は36.5%だった。純利益は1830万ドルだった。
コーポレートロゴは2018年2月にリニューアルした。過去は、「Proto」と「Labs」が半角スペースが入っていたが、新しいロゴでは「PROTOLABS」と2ワードが詰まって大文字の表現になった。
ロゴの下部にくるキャッチコピーは、過去のものは「Real Parts.Really Fast」と部品加工サービスのスピードを強調していたが、今回は「Manufacturing.Accelerated」とモノづくりの加速そのものを指すようになった。日本法人が日本語訳としているのが「ものづくりの加速で競争力を」(同社表記)。「創業当初は部品試作が中心であったが、現在は最終製品での事例が増えてきている」(ホルト氏)ということで、時代に合わせた文言となった。最終製品での活用に関しては、株式会社インタフェース(広島県)が開発する超小型産業用PC「Super Classembly devices」の筐体部分の小ロット生産で採用されている。
IoT(モノのインターネット)サービスやスマートコネクテッド製品への取り組み、マスカスタイマイゼーションへのシフトなど、製造業自体が大きく変化している背景から、プロトラブズが試作にとどまらないサービスになってきている。そのことからも同社では他社とのパートナーシップを強化している。例えばオートデスクの3D CAD「Fusion 360」での直接連携、ダッソー・システムズの「Make Marketplace」での連携を進めている。HPやGEといった大手メーカーもパートナーで、新たな動きを模索している。
日本国内では、金型部品メーカーでオンラインカタログを展開するミスミと協業。ミスミのオンラインサービス「meviy(メヴィー)」と連携し、カタログ内の標準部品ではユーザーの要求が満たせないといった場合などに、カスタムパーツを発注・製造する仕組みとしてプロトラブズが動いている。
日本法人としては2018年4月に軟質金属加工に高純度銅(C1020)を追加、同年5月には硬質金属の納期を最短で1営業日にまで短縮しかつ軟質金属の製造において対応サイズを従来の約2倍に拡大した。3軸加工によるアルミの加工サイズは現在、最大で340×260×44.5mm。
2018年10月1日付で、日本法人内に「企画・開発部」を設置し、日本市場の強化に取り組む。専任担当を4人配属し、日本市場にあった最適なサービスの開発や実行を目指す。同社のグローバルな開発動向に同期しながら、日本独自のサービス開発に積極的に取り組んでいく。専任担当による日本市場調査と分析をしながら、デザイン(設計)のコンサルティングや反り解析サービス、アルマイト処理やカスタム仕上げなど二次加工サービスを検討している。これらは既にパイロットテストが始まっており、2018年の最終四半期から2019年以降に提供することを目指している。2017年の記者発表でも話が出ていた日本拠点での3Dプリントサービスについても、この部門で引き続き調査と分析を進め、日本での具体的な展開方法など、時期も含めてこれから決めていく。
今回、日本法人社長に就任した今井氏は、オランダで幼少期から学生時代までを過ごしたという。オランダのデルフト工科大学(Delft University of Technology)の機械工学部で修士課程修了後には卒業後には日本に戻りソニーへ入社。VAIOブランドのデスクトップコンピュータの欧州事業の立ち上げなどに携わった。以後のキャリアではいくつかのメーカーを経験してきたが、新事業開発関連などがメインであったと今井氏は振り返る。「今回、かつての専攻(機械工学)に戻ってきた形」(今井氏)。プロトラブズに入社した際、今井氏は「日本拠点の『年産1500型』という生産キャパシティーとスピードに驚いた。自分がVAIOに携わっていたころではとても考えられないことだ」と述べる。切削加工の年産については2017年度は4万5000パーツという発表だったが、2018年9月末時点では5万パーツ以上に増加したと同社は発表している。
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