プロトラブズ本社が小ロットの最終製品向けサービスを提供、日本法人では生産能力を増強:メカ設計ニュース
プロトラブズ本社は小ロットの最終製品生産向けサービスを整備。デジタル検査サービスも提供している。日本法人では需要拡大に対応するための生産能力拡大を実施した。プロトラブズ全社としては、特に切削加工の売り上げで顕著な伸びがあった。
試作・小ロット部品の受託製造を行うプロトラブズは2017年11月16日、日本向けの事業戦略説明会を開催した。米プロトラブズ 社長兼CEO ヴィッキー・ホルト氏は、同社のグローバルの財務実績と今後の事業戦略を明かした。プロトラブズにおける2016年度の売り上げは2億9800万ドルで、ホルト氏が同社CEOに就任した2014年以来、年間平均成長率17%をキープしながら安定して売り上げを伸ばしているという。
2017年第3四半期の財務ハイライトとしては、前年同期比で12.7%増となる8800万ドルを達成。特に切削加工(CNC)は前年同期比で24.7%増と「驚きの伸び」とホルト氏は説明する。売上総利益としては56.0%と前年同期の56.5%より微減となった。同社が主なターゲットとする設計開発者の利用者数については2017年第3四半期で1万6909人に達し、前年同期比で18.5%増となった。売上総利益としては56.5%と前年同期の56.5%より微減となった。
2017年7月から、プロトラブズ本社では短納期生産・小ロット多品種製品向けの受託製造サービスを提供開始。同社の創業当初は射出成形のみのサービスで、ほぼ試作用途であった。それが現在は最終製品生産におけるニーズが増えてきており、「グローバルでは、全体の20%ほどが最終製品での利用」だとホルト氏は説明する。
これまでのサービスも試作に限定したものではなく、最終製品生産においても活用されてきたが、今回提供するのは最終製品生産により特化したサービスとなっている。例えば、従来サービスでは金型の所有権はプロトラブズのみにあったところを、ユーザーに権利を移管することが可能になった。併せて、製品のデジタル計測とレポートのサービスも提供する。近年の製造業においてはマスカスタマイゼーションのニーズが増えている。そのニーズに対し、同社が得意としてきた短納期かつ小ロット生産の強みを生かしたサービスを提供する。アセンブリー(組み立て)については、単純なものに限り「限定サービス」ということで相談を受け、対応するとのことだ。
米国拠点で先行導入してきた、HPの産業用3Dプリンタ「Jet Fusion 3D」は、2018年1〜3月の間に欧州拠点で稼働を開始する予定だ。「速く、安く部品製作ができる点がよい。対応材料が現時点ではナイロン1種類なので、今後増えることを期待している」とホルト氏は話す。
プロトラブズでは2018年末から2019年初頭にかけて、米国内で新規拠点を開設し、さらなる生産力増強を図る予定だ。受託製造サービスによって見込まれる受注増大に対応する増強となる。現在の米国拠点は本社オフィスのビルが1つ、4つの工場(内、3Dプリント専門のモリスビル工場が1つ)の合計5つの建屋で構成される。
日本におけるキャパシティーの増強
プロトラブズの日本法人は生産キャパシティー増強のために2016年8月に拡張移転を実施した。それから約3カ月後の同年11月15日時点においては、金型の生産能力は年間1500型以上まで拡大し、前年比で50%増となった。成形数については標準10日で3000部品から、5000部品まで拡大、20日の場合は6000部品から1万部品と前年比で67%増。切削加工については年間3万部品であったところ、4万5000パーツと前年比で50%増となった。
増強移転と併せて、体制強化も実施。「ISO9001:2015」「ISO14001:2015」「ISO27001:2013」の3規格の認証を2017年2月21日に同時取得した。「継続的な改善を求める企業文化の促進」の活動として、プロトラブズ全社で取り組む改善活動である「PROTO EXCELLENCE」を展開。品質保証メソッドの確立やプロセス改善などに努めている。米国本社においては既に、部品製作におけるサイクルタイムの削減、スタッフ1人当たりの生産性の向上、射出成形におけるセットアップ時間やルーティン作業の削減など成果を出している。
最終製品生産向けニーズに対応するために、日本拠点においては2017年9月に追加成形サービスがカバーする金型当たりの月産数の上限を1万個まで増やしたと発表している。本社で対応開始した金型所有権の移管、検査サービスなどは日本拠点では現時点未対応。
2018年以降、現在は米国で製造している5軸切削加工、LSR(液状シリコーンゴム)射出成形の国内内製化の検討を継続していく。具体的な実現時期については未定である。他拠点で先行して開始している3Dプリントサービスについても2018年中の開始を目指している(関連記事:「日本での3Dプリントサービスは周到かつ慎重に」プロトラブズCEOのホルト氏)。「日本国内では後発サービスとなるため、プロトラブズならではの利点を生かしたサービス提供の形を検討している」(プロトラブズ日本法人 社長 トーマス・パン氏)。
ウソではありません(笑)
ホルト氏は2017年9月に中部インダストリアル・エンジニアリング協会の海外視察団が米国のプリマス工場に訪れたことを明かした。「ハーレーダビッドソン、キャタピラー、ボーイング、GE Digitalといった大手の中に、小さな当社がそこに肩を並べられたことがうれしい」と、ホルト氏は喜びを語っていた。「その上、当社の訪問が一番面白かったという声もいただいた」(ホルト氏)。
「(同社の資料にある)装置がたくさん並ぶ工場の写真の中にスタッフが1人しかいないから、『これPhotoshopで加工したんじゃないの?』と言われたのよ」とホルト氏は笑う。従来の部品加工工場の様子とはかけはなれたイメージに、訪れた人たちが驚いたという。ICT(Information and Communication Technology)で業務の多くが自動化されているため、現場スタッフの数が非常に少ないことも同社の特徴である。これは日本拠点も同様である。
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