ソニーのLPWAの正式名称は「ELTRES」、3カ月1000円で国内プレサービスを開始:組み込み開発ニュース
ソニーとソニーセミコンダクターソリューションズは、独自のLPWAネットワーク技術がETSIの国際標準規格として公開されたことを受けて、正式名称を「ELTRES(エルトレス)」と名付けて世界に向けて普及を進めると発表した。
ソニーとソニーセミコンダクターソリューションズは2018年9月28日、独自のLPWA(低消費電力広域)ネットワーク技術がETSI(欧州電気通信標準化機構)の国際標準規格として公開されたことを受けて、正式名称を「ELTRES(エルトレス)」と名付けて世界に向けて普及を進めると発表した。発表と同日に、ソニーネットワークコミュニケーションズによるELTRESの国内プレサービスの提供を始めた。提供エリアは東京都で、利用料1000円(税別)、利用可能期間は最大3カ月となっている。
ELTRESは、まず「Sony's LPWA(ソニーのLPWA)」として2017年4月に発表された。ISM帯域である周波数923.6M〜928MHzを用いており、sigfoxやLoRaWANなどと同じアンライセンス系のLPWAネットワーク技術の1つになる。ETSIの「TS 103 357 "Lfour Family"」として標準規格化されており、技術仕様も確認できるようになっている※)。
※)ETSI TS 103 357 "Lfour Family"の技術仕様書
ELTRESは、空中線電力が20mWの特定小電力(サブGHz)無線でありながら、見通し100km以上の通信距離、時速100km以上の高速移動中でも通信可能という特徴を持つ。また、送信機と受信機間でGPSの時刻情報を同期することによる高精度な通信を実現しているという。
具体的には、同一データを4回送信し受信した4回のデータについてタイミングを合わせて波形合成する技術(最大6dB)、テレビ放送で用いられるLDPC誤り訂正方式の応用(7dB)などにより感度を大幅に向上している。また、データの間に既知の同期ビットを定期的に挿入して送信しており、受信機でこの同期ビットを元に通信伝送路特性による影響を推定。この影響をキャンセルすることで、高速移動体によるフェージングを補正している。さらに、GPSの時刻情報同期により時間に密度が高い多重化が可能で、送信ごとに余計なプリアンブルを付加する必要がないので送信時間も短くできる。
なおデータ送信は、送信機から受信機への上り一方向で、ペイロードは128ビット。最小送信間隔は1分となっている。
プレサービス専用端末の動作寿命は単三乾電池2本で6日と短いが……
ソニーネットワークコミュニケーションズは、今回の発表を受けて国内向けに「ELTRES IoTネットワークサービス」を始める。2018年9月28日に受付を開始した利用料1000円のプレサービスには、送信機となるプレサービス専用端末(単三乾電池2本付き)1台が含まれている。
プレサービス専用端末は、外形寸法が47×115×33.7mmで、重量は130g以下。データ送信頻度は3分間隔送信にのみ対応しており、GPSデータと電池残量データを送信する。単三乾電池2本による動作寿命は約6日としている。データ送信が3分間隔で固定されていること、GPSデータを送信することから、自動車など移動体への適用を想定しているようだ。
「ソニーのLPWA」として発表されたときは、消費電力が小さく、1日に1回位置データを送信する用途であれば、コイン電池1個で10年間動作させられるとしていた。プレサービス専用端末は3分間隔送信しかできないため動作寿命は6日と短いが、これを1日に1回だけの送信に置き換えれば、電池交換なしで約8年動作させられることになる。
なお、ELTRES IoTネットワークサービスではソリューションの提案やアプリケーションの提供などのビジネス展開を検討する企業を対象としたパートナープログラムも始める。パートナーカテゴリーは、多種多様なIoT(モノのインターネット)向けデバイスの設計と製造を行う「端末パートナー」、ELTRES IoTネットワークサービスを活用したソリューションの開発、構築、運用を行う「ソリューションパートナー」、連携可能なアプリケーションやプラットフォームを構築する「アプリケーションパートナー」、ソリューションやアプリケーションなどを販売する「チャネルパートナー」の4つ。
パートナープログラム参入企業に対しては、ソニーネットワークコミュニケーションズが最新技術や市場動向などの情報を提供するだけでなく、プロモーションやパートナー同士のビジネスマッチングなどをサポートするとしている。
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