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へら絞りの精度は切削よりも悪いのか? 測定で証明した精度の良さブラックホール撮像とへら絞り(2)(2/2 ページ)

誰も成功したことがないブラックホールの撮影に挑戦したい――その撮影に使うのはへら絞り(※)製のパラボラアンテナだ。国立天文台 電波研究部 助教の三好真氏は、安価な加工法として検討をはじめたへら絞りが、思いのほか加工精度がよく、かつアンテナ精度向上にもつながりそうだと気付いたという。現在、へら絞り加工の精度について詳しく研究するため、クラウドファンディングにも挑戦中だ。三好氏に、へら絞りに出会った経緯や、本格的に研究しようという考えに至った理由について聞いた。

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へら絞りはもっと社会に生かせる

 三好氏は型の精度も高めれば、アンテナの残差も20μmに収まるのではないかと期待している。伊勢領製作所の磨いた金型は24μmという数字が出ているが、より精密に測定したい。

 だが2mという巨大なものを高精度に測定できる装置は限られる。今回、学術系に特化したクラウドファンディングプラットフォームの「academist」への挑戦を決めたのも、この測定のための資金を集めるためだという。クラウドファンディングが成功すれば、切削や超精密加工などを行うクリスタル光学での計測を行う。

 また支持の検討や変形のシミュレーションなどもしていきたいという。

 へら絞りアンテナは、大きな力をかけなければ、持ち運び時には変形しても元に戻ようだ。適切な支持に乗せれば十分な精度を確保できるのではないかと三好氏は考えている。

 へら絞りの加工精度を研究し、論文として残すことで、社会の役に立つはずだと三好氏は考えている。「応用先の1つとして考えられるのが、テラヘルツ波通信です。ブラックホールの撮影に使用する周波数はテラヘルツ波とおよそ同じなためです」(三好氏)。テラヘルツ波は、通常使われる通信周波数帯よりも周波数が高く、バンド数がより多く取れることから、期待の高い帯域だ。

 天文学のためにはじまったへら絞りの研究は、よりブラックホールの謎に迫るはずだ。その成果は、いつの日か身近なところにも登場しているかもしれない。


 次回は、今回のアンテナ本体のへら絞りに関わった技術者、北嶋絞製作所の半澤実氏に話を聞く。(次回に続く)

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