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量子コンピュータでなぜAIは進化するのか、全ての鍵は「最適化問題」CEATEC 2017(1/2 ページ)

「CEATEC JAPAN 2017」の自動運転技術に関するカンファレンスで、東北大学大学院 准教授の大関真之氏が登壇し、「量子アニーリングが拓く機械学習と計算技術の新時代」をテーマに講演を行った。

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東北大学の大関真之氏
東北大学の大関真之氏

 「CEATEC JAPAN 2017」(2017年10月3〜6日、千葉県・幕張メッセ)の自動運転技術に関するカンファレンスで、東北大学大学院 准教授の大関真之氏が登壇し、「量子アニーリングが拓く機械学習と計算技術の新時代」をテーマに講演を行った。

 現在、量子力学という科学技術を利用した新しいコンピュータ「量子コンピュータ」を作り出そうという動きが加速している。大関氏はまず、2017年5月にIBMが発表した17qubit(量子ビット)の量子コンピュータを紹介した。「このコンピュータは量子力学に基づくわれわれの体の動きや化学物質などをシミュレーションすることができ、量子シミュレーションという分野で活用が始まっている」(同氏)。また、グーグル(Google)も同年5月に22qubitの量子コンピュータチップに関してテストが成功したことを発表している。そして2017年中には、49qubitの量子コンピュータが完成することを見込んでいるという。

 大関氏は「今あるスーパーコンピュータは、化学物質のシミュレーションを時間をかけて行っている。現状、われわれの持つデジタルコンピュータをフル活用しても、この49qubitの量子コンピュータができるシミュレーションのスピード、計算処理能力に追い付かない。つまり、新しい技術に従来技術のスーパーコンピュータが追い抜かれる時代がこようとしているわけだ。2017年は量子コンピュータの時代が幕開けした年といっていい」と強調する。

 これらの量子コンピュータは、暗号解読などに使われる素因数分解などに利用できるといわれている。しかし、現在の暗号技術に対して素因数分解を行うとすれば、100万〜1000万qubitクラスの量子コンピュータが必要になるという。

量子アニーリングで「最適化問題」を解決する

 現時点で、利用可能な量子コンピュータとしては、カナダのベンチャー・D-Wave Systemsが開発した「D-Waveマシン」がある。これまでの量子コンピュータは、デジタルコンピュータのようにプログラミングして、そのプログラムの指令通りに計算処理するという量子ゲート(量子回路)型が採用されていた。しかし、D-Waveマシンは、量子ゲート型よりも産業的により役立つことを目指しており「量子アニーリング(量子焼き鈍し)」型という別の方式を採用している。大関氏は「この量子アニーリングが機械学習と計算技術の新時代をもたらすことになる」と断言する。

 量子アニーリングが何に役立つのかというと「われわれにとって一番時間のかかる計算プロセスといえば、それは人生だ。人は右か左にどちらに行けばよいかを日々悩みながら生きているが、量子コンピュータはこの両方を比べることができる」(大関氏)。

 これまでのデジタルコンピュータは0と1、電流の強弱によってデジタル信号を作って計算処理をしていた。量子力学では0と1組み合わせることができる。重ね合わせの原理というもので、右行った場合と左に行った場合を比べることが得意だ。

 それらの数字の組み合わせを利用することで、今まででは想像のつかない次元を超えた計算ができるということで、量子コンピュータは期待されてきた。そして、0と1の両者の組み合わせを同時に比較することができるという性質に注目して、量子アニーリングという計算手法が生まれた。

 得意技は「最適化問題」を解くことだという。クルマの運転中、右と左のどちらに行けば渋滞に巻き込まれないかなどをシミュレーションしながら、どちらの道が最適なのか瞬時に教えてもらえれば社会生活に十分役立つことになる。

 最適化問題というのはルールに沿ってパズルを解くようなものであり、例えば数独などでは白く隠された部分、情報が抜け落ちた部分が分かるようになる。このように計算機を用いると少ない情報からも完全な情報を復元できる可能性がある。「われわれは、少ない情報から数学的な計算プロセスにより最適化問題を解くことで、常識を超えるという研究をしている」(大関氏)。

 最適化問題を解く場合、情報が少なくても計算上工夫をすれば本来の姿を見ることができる。例えば、ブラックホールシャドー(ブラックホールが黒い影として見えること)を見ることを目的に国家プロジェクトが進んでいる。取得できるデータが限られていることから状況は厳しかったが、最適化問題の力でそれを解いて実際に見ることができた。

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