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中小製造業のIT導入による労働生産性向上と見えてきた課題2018年版中小企業白書を読み解く(2)(5/5 ページ)

中小企業の現状を示す「2018年版中小企業白書」が公開された。本連載では「中小製造業の生産性革命は、深刻化する人手不足の突破口になり得るか」をテーマとし、中小製造業の労働生産性向上に向けた取り組みを3回に分けて紹介する。第2回は中小製造業におけるIT利活用による労働生産性の向上について取り上げる。

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業務プロセスの見直しがIT導入の効果を最大化

 前述の3類型に見られるように、ITを導入しても効果が得られた企業もあればそうでない企業もある。IT導入の効果が得られた企業に対し、その理由を尋ねたところ「IT導入の目的・目標が明確だった」「専任部署、あるいは専任の担当者を設置した」「経営層が陣頭指揮をとった」が約3割で上位を占める結果となった(図15)。次いで、「業務プロセスの見直しを合わせて行った」「IT導入を段階的に行った」「導入前に、利用予定の従業員の意見を聞いた」が約2割で続いている。

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図15:IT導入の効果がうまく得られた理由(クリックで拡大)出典:中小企業白書2018

 さらに3年前と比べて労働生産性が向上した企業に、図15で挙げられているそれぞれの取り組みに対し労働生産性に与える影響の大きさを調査したところ、最も大きいのは「業務プロセスの見直しを合わせて行った」であり、次いで、「経営層が陣頭指揮をとった」「外部のコンサルタントを活用した」が続くことが分かった(図16)。本稿の第1回でも、労働生産性を向上させるための取り組みを行うにあたり、業務見直しを行うことが成功のカギといえると述べたが、IT導入の効果を高めるという面においても、業務プロセスの見直しが他の取り組み以上に有効ということが分かった。

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図16:IT導入の効果がうまく得られた理由と労働生産性(クリックで拡大)出典:中小企業白書2018

政府によるIT導入支援のための施策

 中小企業白書2018では「IT利活用により、労働生産性の分母である労働投入量も分子である付加価値も、それぞれ改善が可能であり、両者による労働生産性の向上が期待される」とIT利活用の重要性を述べている。この言葉通り、中小企業におけるITによる労働力向上について、政府もさまざまな取り組みを行っている。ここでは、代表的な事業を2つ紹介したい。

IT導入支援事業

 政府は、サービス産業の労働生産性伸び率を2020年までに2.0%とすることを目標に掲げている。そこで生産性の底上げのため、中小企業・小規模事業者などに対し、バックオフィス業務などの効率化や新たな顧客獲得などの付加価値向上(売上高向上)に資するITの導入支援を行っている。

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表2:平成28年度事業の概要(クリックで拡大)出典:中小企業白書2018

スマートものづくり応援隊などの事業

 製造現場の経験が豊富な人材や、IoTやロボットに知見を有する人材などが指導者としての汎用的なスキルを身につけるための研修を実施し、育成した指導者を製造業などの中小企業・小規模事業者の現場に派遣することで、こうした企業の生産性向上や新規事業開拓を促進することを目指す。平成29年度の予算は16.7億円で25拠点を整備した。平成30年度は予算6.7億円で、補助率を2分の1にし、全国40拠点の整備を目指すとしている。

 本稿では、中小製造業のIT利活用の現状を明らかにするとともに、IT利活用による生産性向上のためには、機能連携や業務プロセスの見直しが大切であることを掘り下げた。次回は、従業員の多能工化・兼任化、アウトソーシングによる労働生産性の向上などについて取り上げたい。

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筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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