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1個から個別製造できる複合装置を開発、筐体の3Dプリントから基板実装まで3Dプリンタニュース(2/2 ページ)

慶應義塾大学は、科学技術振興機構(JST)発の研究開発成果を紹介する「JSTフェア2018」(2018年8月30〜31日、東京ビッグサイト)において、卓上でIoTデバイスを1個から製造可能とする複合装置「FABRICATOR(ファブリケーター)」を披露した。

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FPGAをArduinoのように使いやすく

 3Dプリンタの制御部はオープンソースの制御システムである「RepRap」をベースとしたものが多い。しかし「RepRap」では画像処理などの高度な機能を実行できない場合も多く制約が生じる。これらを解決するために「FABRICATOR」の制御部を高度化するために取り組んでいるプロジェクトが「Pynquino(ピンキーノ)」である。

 「Pynquino」は、XILINX(ザイリンクス)のアプリケーションプロセッサとFPGA回路を集積したデバイス「Zynq」をPythonでデザインできるようにするオープンソースプロジェクト「PYNQ」により生まれた開発ボードを活用し、FPGA上のリアルタイム制御とLinuxアプリケーションが協調するシステムを構築できるようにすることを目指したものだ。開発を素早く行えるプログラミング環境を開発し、3Dプリンティングの制御に活用することを目指す。

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3Dプリンタで活用された「Pynquino」対応基板(クリックで拡大)

 「Pynquino」は「PYNQ」と「Arduino」を組み合わせた造語で、まさにFPGAでArduinoなどで行ってきたことをより高度に実現することを目指している。「RepRap」で提供されるファームウェアは基本的にはArduino基板を対象にしたものが多いが、これらをFPGA上でも動作できるようにする。さらにビジュアル化でプログラムの知識がなくてもプログラム開発できる開発環境を用意している。

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プログラム開発環境。ブロックを組み替えるだけでプログラムが生成される(クリックで拡大)

 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 特任助教の青木翔平氏は「3DプリンタをFPGAの処理能力を活用して高度化できる。また新たな材料などに適応した3Dプリンタ開発などに役に立つはず。基本的にはオープンソースコミュニティーに全て公開し、高度化を進めていきたい」と開発のポイントについて述べている。

 具体的なアプリケーションとしては、先述した「FABRICATOR」に加えて、KJケミカルズの新素材向け3Dプリンタの開発などで活用しているという。

人の触感に迫る個別デバイスの開発

 これらの3Dプリンティング技術の先に目指しているのは、個々に最適化された製品を自由に作り出すという世界である。その取り組みの一環として、触覚と3Dプリンティング、オノマトペとの関係性の解明についての研究内容についても紹介した。「ぐにゅ」や「しゃき」「ぼいん」「もちもち」などのオノマトペで示される触感に最も近い感触を3Dプリンティングで再現できれば、個々に最適化され心地よさを実現するデバイスなども開発できるようになる。そのための基盤として相関性と数値化に取り組んでいるという。

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触覚とオノマトペと3Dプリンティングの相関性を解き明かすことを目指す研究(クリックで拡大)

 これらの技術群は、JSTの研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援によって行われている「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」プロジェクトの一環として取り組まれているものだ。COIプログラムは、10年後の目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型のチャレンジング・ハイリスクな研究開発を最長で9年度支援するプログラムである。

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