コマツは建設だけでなく農業と林業もスマート化「今までできなかったことをやる」:スマートアグリ(2/2 ページ)
オプティムが開催した「スマート農業アライアンス」の成果発表会に、コマツ 会長の野路國男氏が登壇。コマツが石川県で推進しているスマート農林業の取り組みについて紹介した。
林業の工程を最大90%効率化へ
コマツの石川県での取り組みは農業にとどまらず、林業にも展開を広げている。
日本は、国土面積に対する森林面積が66%という世界有数の森林大国だ。さらに、世界全体の傾向として森林は減少傾向にあるが、日本は森林が増え続けている。その一方で、木材自給率が3割という木材輸入国でもある。現在の日本の林業産出額は4000億円前後で横ばいであり、林業従事者は他の1次産業と同様に減少を続けている。
この林業をスマート化することで、成長産業に変えようというのがコマツとオプティムの狙いだ。造林、造材から輸送、流通、加工、利用に至るまで、林業のサプライチェーンを見える化することが端緒となる。
例えば、資源量調査では、従来の人力からドローンによる空撮と解析に置き換える。造材、仕分け作業は、ICT建機の知見を生かしたICTハーベスターを導入し効率化を図る。そして、需要先配送については、森林組合の土場や市売りといった市場に送るのに替えて、製材所や製造所といった顧客のもとに直接送るようにする。野路氏は「切ってから市場に持って行って売るのではなく、切ったら直接売る」と説明する。
既に、資源量調査に用いるドローンによる空撮については、オプティムがスマート農業向けに展開している技術を応用した「Forest Scope」の提供を始めている。ICTハーベスターは、伐採から、長さを変えた造材加工、木寄せまで全てを行えるという。コマツとオプティムは、これらの取り組みを進めて、林業の工程を従来比で最大90%効率化することを目指すとしている。
講演の最後で野路氏は「いたずらにAI(人工知能)やIoTという言葉に踊らされてはいけない。本当に生産性が上がるのか、所得が上がるのかが重要だ。コマツでは鉱山用トラックを無人化したが、これは300トンという巨大であること、関わる人数が多いからこそ意味があった。翻って、監視のための人間が必要な自動運転トラクターに意味はあるのか。ロボット化や自動化、ICTを使うことが目的ではない。そこはよく考えてほしい」と述べている。
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