検索
連載

2万品番もの超多品種少量生産を改善した“シンの”トヨタ生産方式とは(前編)鈴村道場(9)(1/3 ページ)

トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏による連載コラム「鈴村道場」。今回から前後編で、大手メーカーにおける2万品番もの超多品種少量生産の生産改善実践事例を紹介する。前編では、「導入の背景」→「実践概要」→「実践手順」→「効果」までの全体像について説明しよう。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 世の中の動きとして顧客嗜好の多様化に合せ、各顧客の個別仕様に適した商品を提供するマスカスタマイゼーション化の移行が進んで行くといわれています。今回はその参考になると思い、大手メーカーで実施した生産改善の実践事例についてご紹介します。

 前後編の2回に分け、前編は「導入の背景」→「実践概要」→「実践手順」→「効果」といった全体像の説明を行い、後編は「実践内容のポイント」→「業務改革を定着させるための心得」→「まとめ」といった各論について具体的に解説していきます。

1.導入の背景

 本クライアント企業は日本発の世界を代表するメーカーです。社名は伏せておきますが、誰もが知っている企業です。建築用の電設資材における「①製品でもあり自社総合組立製品のユニット部品にもなる商品(以下、ユニット品と表記)」「②①を使用した総合組立製品(以下、総組立製品)」の2タイプの製造販売を行っています。生産拠点は東海地域の主力工場を中心に海外生産・国内外の販売を展開しています。

 ビル建設などの建築物に使うもののため、施工会社やビル工事会社が注文をしてくるのですが、欲しいタイミングは工事の進捗に合せ直近にならないと分らない状況です。しかしながら、総組立品は寸法や電気容量の組合せで2万品番、ユニット品は6000品番と超多品種となります。従って、私が指導を始めた当初、製品在庫はほとんど持っておらず、受注〜出荷まで3カ月の納期回答をしていました。

 当時の社長はこの状況では低コストを売りにしている海外に勝てないとの危機感を持っており、「欠品ゼロにして納期保証(原則即納)の実現」を目標に掲げ私に改善指導の相談が来ました。

 業務を確認すると、生産管理担当者が顧客の要求納期に対し、計画立案に1週間以上の時間かけていました。そして、部品を手配するのに時間がかかるため、計画立案の対象期間は何週間か先になっていました。これを見て思ったのは、連載第1回で紹介したたとえ話です。

「競馬はレースが終わってから馬券を買ったら確実に当たりますが、レースが始まる前に予測するためほとんどの人が外れます」

 今回は、レースが始まる前に予測をして外すパターンだなと感じました。

図1
図1 事業概要(クリックで拡大)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る