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その改善はトヨタ生産方式の「本質」を外している鈴村道場(1)(5/6 ページ)

自動車業界のみならず、今やさまざまな製造業で活用されている「トヨタ生産方式」。しかし、今伝えられているトヨタ生産方式の多くは本質を誤解したものーーと指摘するのがエフ・ピー・エム研究所の鈴村尚久氏だ。大野耐一氏とともにトヨタ生産方式を作り上げた父・鈴村喜久男氏の長男であり、自身も長年にわたってトヨタ自動車で生産改善活動に従事。その後100社以上の企業の改善活動を支援してきた鈴村氏。本「道場」ではトヨタ流改革の本質を知る同氏が、日本の製造業が抱えるさまざまな「悩み」と「課題」を斬る。

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トヨタ生産方式の今後について

 現在のトヨタ生産方式で論じられる改善のポイントは製造現場の工数改善に特化しすぎていると感じます。一般的な製造業では商品の販売業務(売って、納めて、代金回収する)が本業の大切な部分なのにおざなりのまま。

 私は国内物流、海外物流、(代理店も含む)販売業務の改革=サプライチェーンの構造改革がポイントだと捉えております。その上で、もっと大切なのは設計スタンダードの構築を始めとする、開発部門の改革が必要です。

日本の製造業のマネジメントにおける違和感

 前項でお話ししたことが日本の製造業のマネジメント全体にも相通ずるところがあると感じています。

  • なぜ多くの製造業は売れないものまで先に作って大量にため込んでしまうのか?
  • もっと売れるはずなのに注文を受けてからしか作らないのか?

 両方とも間違っていると思います。よく私は次の例え話をします。競馬はレースが終わってから馬券を買ったら確実に当たり儲かります。でもレースが始まる前に予測するため、ほとんどの人が外れます。

 牛丼屋は「ごはん」「牛丼の具」「紅ショウガ」を先に用意して注文が来てから盛り付けをするだけ。特盛、大盛、普通盛りの顧客のニーズに合わせ作業を変えれば瞬く間に顧客のニーズに適した商品が提供できる。

 多くの製造業は、

  • レースが始まる前に予測→欠品と在庫の山
  • 牛丼屋で注文を受けてから牛肉を1から調達→リードタイムが極端に長い→顧客に大幅な我慢を強いる

このどちらかをしています。どちらも間違いなのです。

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