連載
その改善はトヨタ生産方式の「本質」を外している:鈴村道場(1)(6/6 ページ)
自動車業界のみならず、今やさまざまな製造業で活用されている「トヨタ生産方式」。しかし、今伝えられているトヨタ生産方式の多くは本質を誤解したものーーと指摘するのがエフ・ピー・エム研究所の鈴村尚久氏だ。大野耐一氏とともにトヨタ生産方式を作り上げた父・鈴村喜久男氏の長男であり、自身も長年にわたってトヨタ自動車で生産改善活動に従事。その後100社以上の企業の改善活動を支援してきた鈴村氏。本「道場」ではトヨタ流改革の本質を知る同氏が、日本の製造業が抱えるさまざまな「悩み」と「課題」を斬る。
改善の本質とは
定石という言葉がありますがこれには2つの種類があると私は捉えております。
- 将棋、囲碁の定石
- 麻雀、トランプの定石
この2つの違いは再現できるか再現できないかにあります。
- 将棋、囲碁の定石は再現できる→いわゆる勝つための定石
- 麻雀、トランプの定石は再現できない→いかに負けないようにするための定石(言い換えると負ける確率を下げ、勝つ確率を上げるための定石)
生産や物流でいう改善は将棋、囲碁の定石に近く、販売は顧客を層別したら似たようなケースが起きる可能性が高いといった意味で麻雀、トランプの定石に近い。どちらも確実に素早くという意味では同じです。
物事を単純にして、誰でもできる仕掛けを作ればもっと良くなることばかりなのです。今は人を変えていく、人材教育が最も重要です。特にホワイトカラーの教育に力を入れるべきです。成長の第一歩はまず素直にやって基本を学ぶことからです。成功すると面白くなって自分から工夫するようになります。
簡単ではありますが、私の略歴と現状感じていることについてのお話は以上です。次回以降は次の検討テーマについて私が感じていることを具体的にお話していきます。皆さまからも私に尋ねたいことがありましたら遠慮なく本連載までご質問ください。できる限り皆さまのご質問にもお応えして行きたいと考えております。
検討テーマ案
- 「コモディディ=コストダウンが必須」は本当に正しいのか?
- どんな業種にもトヨタ生産方式は活用できるか?
- 円高円安が激しく入れ替わる中でのものづくりの目指す姿とは?
- 重大災害による工場停止について
- 市場クレームにつながる品質問題は何故防げないのか?
- 新車が数ヶ月待ちなのは何故?
- 家電業界の経営難について
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「鈴村道場」バックナンバー
- なぜIoTなのか、トヨタ生産方式の課題から考える
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。日本的な“人の力”に頼った手法に見られがちですが、実はトヨタ生産方式にもIoT(Internet of Things、モノのインターネット)は適用可能です。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説します。 - トヨタ生産方式と設備保全、IoT活用をどう考えるか
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第2回となる今回は、設備保全へのIoT活用のポイントについて紹介します。 - 品質保証の体制をIoTでカイゼンする
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第3回となる今回は、品質保証体制へのIoT活用のポイントについて紹介します。