トヨタが3カ月で650億円分の原価低減、いすゞとは資本関係を解消:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車は2018年8月3日、東京都内で会見を開き、2018年4〜6月期(2019年3月期 第1四半期)の決算を発表した。売上高は前年同期比4.5%増の7兆3627億円、営業利益は同18.9%増の6826億円、当期純利益は同7.2%増の6573億円と増収増益だった。連結販売台数は、北米と欧州、アジアでの販売が堅調で、前年同期から2万1000台増の223万6000台となった。
トヨタ自動車は2018年8月3日、東京都内で会見を開き、2018年4〜6月期(2019年3月期 第1四半期)の決算を発表した。
売上高は前年同期比4.5%増の7兆3627億円、営業利益は同18.9%増の6826億円、当期純利益は同7.2%増の6573億円と増収増益だった。連結販売台数は、北米と欧州、アジアでの販売が堅調で、前年同期から2万1000台増の223万6000台となった。
為替やスワップなどの影響を除いた営業利益は、前年同期から1200億円のプラスとなった。原材料費の増加があったものの、それを上回る原価改善の努力で150億円、北米や欧州、アジアでの販売台数増加や車種構成の改善など営業面で450億円、諸経費では通期で見込んでいた品質関連費用が当初の見込みより減少したことにより、600億円を積み上げた。
第1四半期の原価改善については「資材の高騰で500億円悪化していたので、差し引きすると650億円の進捗だった。年間3000億円の原価低減に向けては、第2四半期以降はさらに高い原価改善努力が必要になるだろう。鉛筆1本、紙1枚も大切にする原価に対する意識を全員で持っていきたい」とトヨタ自動車 専務役員の白柳正義氏は説明した。
地域別の販売では、北米は「タコマ」「ハイランダー」が増加し、前年同期比2万3000台増の74万6000台だったが、同地域の営業利益は販売インセンティブの増加により、前年同期から104億円の減少となった。欧州では「C-HR」のハイブリッドモデルの販売増加などにより、前年同期比1万3000台増の25万3000台となった。アジアでは、タイやインド、中国での販売が好調で同3万1000台増の39万4000台だった。
「販売インセンティブは戦略的な投入を実施している。どのモデルに販売インセンティブをどの程度投入すれば収益が最大化するか、従来よりも早いサイクルで検討を回しており、足元では抑制できている。通年では前年度並みに販売インセンティブを抑えられるのではないか」(白柳氏)
2018年度通期の連結販売台数の予測は、当初の見通しから5万台減の890万台に見直した。欧州とアジアでは販売が増加するが、北米は車種の切り替えによって前期比で5万台減に落ち込む想定だ。足元の販売状況、金利などを踏まえて慎重な目標設定とした。中国での小売台数の増加を折り込み、グループの総販売台数の見通しは1050万台で据え置いた。
また、2018年度通期の業績予想は、売上高と営業利益、当期純利益は変更していないが、為替レートを1米ドルを105円から106円に、1ユーロを130円から126円に見直した。同年度通期の営業利益については、当初の見通しと比較すると原価面では資材価格の大幅な上昇やアルゼンチンのインフレの影響が大きく700億円のマイナス、営業面では販売インセンティブの改善などもあり1100億円のプラス、諸経費は会計処理を変更した影響で400億円のマイナスとなる見通しだ。
2018年度通期の業績見通しや販売台数に、米国で検討されている完成車への追加関税の影響は織り込まれていない。追加関税が発動されると、完成車ベースで1台6000米ドルの影響が出る見通しだ。鉄鋼やアルミニウムが対象の施行済みの関税では100億円程度の影響を見込んでいる。「日本から米国への輸出を減らすか、日本での生産を絞る可能性は」「北米での現地生産拡大は」といった生産調整に関する質問に対し、現時点で具体的に決まっていることはないと説明した。「国内300万台は、人材育成や技術開発、グローバルな競争力をけん引するための源泉としてこだわっていく。日本市場の活性化にも取り組む」と白柳氏は説明した。
いすゞと資本関係を解消
いすゞ自動車とトヨタ自動車は2018年8月3日、資本関係の解消に合意したと発表した。トヨタ自動車は保有する全ての株式をいすゞ自動車に売却する。いすゞ自動車は取得した自社株を社外との提携など機動的な資本政策に充てる。両社は要素技術レベルの共同開発は継続し、今後の取引の可能性についても常にオープンな姿勢であるとした。いすゞ自動車に対するトヨタ自動車の出資比率は5.89%で、5000万株を保有している。
トヨタ自動車は2006年11月にいすゞ自動車に出資した。小型のディーゼルエンジンや後処理技術、環境技術を対象に開発、生産の経営資源を相互に活用し、技術面の補完を図る狙いだったが、協業は具体的に進展しなかった。乗用車向けのディーゼルエンジンが試作段階まで進んだが、トヨタ自動車がハイブリッド車に大きくシフトしたこともあり、製品化には至らなかった。具体化が進んでいるプロジェクトがあるものの、資本関係の大きさに見合わないことから、資本関係の解消に至ったという。
いすゞ自動車は、トヨタグループである日野自動車との提携は維持する。また、トヨタ自動車の資本が抜けてアライアンスの自由度が上がったことも生かして、社外との提携を模索する。「環境規制の強化で開発負荷が増えており、既存技術と先行投資の両方が負担となっている。会社の規模に関係なく負担となる。商用車は乗用車とボリュームが異なるので、アライアンスは避けられないだろうと認識している」(いすゞ自動車)。
日野自動車はVolkswagenグループの商用車ブランドを統括するVolkswagen Truck & Busとの協業を発表したばかり。技術開発では、ディーゼルエンジン、ハイブリッドシステム、電動化、コネクティビティ、自動運転技術といった既存の分野から新技術まで広く協力する方針だ。
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